「ランク11」(主人公×里中千枝)
*主人公の名前は、便宜的に説明書に掲載されている「月森孝介」としています
1.
「うっまー!!すごい、こんなの食べたことないよ!?」
あたしは孝介くんから差し出されたお弁当のハンバーグを口にした瞬間、驚きの声をあげる。
あたしなんかが逆立ちしても作れないほどおいしい。
ジューシーなその味わいはあたしを天国へと連れ去ってしまいそう。
「うー、もっと食べたい!でも食べ終わるのもったいない!!何というジレンマ……!!」
あたしは彼の存在をすっかり忘れてそのたまらない肉の塊に舌鼓を打つ。
すっかり食べ終わると今さらながらに彼の存在を思い出す。
さりげなく目をやると彼はあたしの様子をじっと見ている。
「やだ、あたし……」
あたしは恥ずかしさのあまり思わず俯く。
お肉を食べるのに夢中になって彼のことを忘れるなんてあまりにも恥ずかしい。
「怒って……ない……?」
あたしはおそるおそる尋ねる。
すると彼は首を横に振ってみせる。
「ほんとに……?」
あたしは半信半疑で再度確認してみる。
彼は気にすることはないといった表情であたしのことを見てにこにこしている。
そんな彼の表情にあたしも釣られて笑顔になる。
「えっと……これ、あたしのために作ってくれたの?」
彼は当然だとでもいいたげにうなずく。
「あ、ありがとね……」
あたしは今までの人生でベストと断言できる笑顔で彼にお礼を言う。
「千枝が喜んでくれてよかった」
彼の心憎いセリフにあたしの体は自然と彼に引き寄せられる。
あたしは弁当箱を横に置くと周りに誰もいないことを確認し彼にもたれかかる。
彼は少し驚いたみたいだけどそのままあたしを受け止めてくれた。
「ずっと……こうしていたい……」
あたしは無意識のうちに出た自分の言葉に驚く。
ちょっと恥ずかしいけど自分の素直な気持ちを彼に伝えられてあたしは一人悦に浸る。
「今日もいい天気ね」
なんとなく会話が途切れたのであたしは何気ない話を振る。
すると彼が急にあたしの肩に手をまわしてくる。
そんなことしてくれるなんて思ってなかったあたしはつい、えっ?、って驚きの声をあげてしまう。
「ご、ごめん」
彼は小さな声でそういうとあたしの肩から手を離してしまった。
「ううん、違うの。ちょっと驚いただけだから」
あたしはそうつぶやくと体をもっと彼に密着させる。
初めて彼の部屋に行った日からあたしは彼に甘えることが多くなってきている。
恥ずかしくないといったら嘘になるけど二人のときはもっと彼にひっついていたい。
2.
「千枝……」
彼があたしの名を呼ぶ。
「なに……かな……?」
すっかりいい気分のあたしは彼の顔を見上げる。
「これ……」
彼があたしの視界にプラスチックの容器をぬっと差し出す。
「えっ……」
あたしは恋人同士の甘い瞬間にはあまりにも似つかわしくない物体……いわゆる弁当箱の登場に現実に引き戻される。
「実は……まだ食べ終わってないんだ……」
彼は頭をかきながらつぶやく。
「ご、ごめん!」
あたしは両手で口元を隠し、彼から凄い勢いで離れる。
自分だけがすっかり満足して彼がまだ食べ終わってないことに気付かないなんて……。
あたしは顔を真っ赤にして彼にごめんなさいと何度も何度も謝る。
彼は苦笑いを浮かべると自分のお弁当を食べ始める。
彼がもぐもぐとお弁当を食べ始める様子をあたしはじっと見つめる。
…………
彼の口にあの絶品な味わいのハンバーグが飲み込まれていく。
「おい……しい……?」
あたしはごくりと生唾を飲み込むと彼に感想を聞く。
「うん……」
彼はその柔らかくジューシーな肉の塊をほおばりながらこたえる。
「おいしいんだ……」
あたしは彼の言葉に相槌を打つ。
すると彼が急にはっとした様子であたしの方を見る。
「な、なに……?」
あたしは動揺を隠しながら彼に尋ねる。
彼はそんなあたしの顔をじっと凝視したあとにつぶやく。
「もしかして……まだ食べたい……?」
「なっ、そっ、そんなわけないじゃない!!」
あたしは即座に否定する。
……心を鬼にして。
「俺はもういいから……」
そういって彼はまだキレイに半分は残っている弁当をあたしの前に差し出す。
あたしの中で史上空前の綱引きが始まっていた。
前に一緒に食べた肉じゃがも確かに絶品だった。
でも今日のハンバーグはそれとはわけが違う。
ぶっちゃけあたしの好みのど真ん中ストライクのハンバーグを前にして、いらない、と断ることはかなりの勇気と決断力と精神力と忍耐力エトセトラを必要とする。
かといってじゃあいただきます、というのはさすがに気が引ける。
彼がわざわざ作ってきてくれたお弁当を彼の分まで食べてしまう彼女なんて聞いたこともない。
実際さっき彼は一瞬ひどく呆れた表情になった気がする。
ほんの僅かな時間のはずなのにあたしては地獄の苦しみともいえる時間を過ごす。
でもそんな苦しみからあたしを救い出してくれたのは……やっぱり彼だった。
3.
「千枝がおいしそうに食べる姿を見るのが好きなんだ」
彼はそう言ってにっこり笑うとあたしに弁当箱を押し付ける。
あたしは仕方ない風を装って彼から弁当箱を受け取る。
……心の中に鳴り響く大歓声と共に。
「ほんとに……食べないの……?」
彼はあたしの言葉に首を縦に振って見せる。
「じゃあ……しょうがないからあたしが食べてあげるね」
あたしは、はやる気持ちを抑えながら彼から箸を受け取る。
「キミが言うから食べるんだからね」
あたしは繰り返し彼に言い訳する。
彼はそんなあたしに笑いながらうなずいてみせる。
あたしは彼がうなずいたのを確認すると彼の弁当に箸をつける……。
「ごちそうさまっ!」
あたしは深い満足感とともに箸を置く。
「おいしかった?」
彼が笑顔で尋ねてくるからあたしは満面の笑みでうなずいてみせる。
しかし……その瞬間、あたしの胃の中にたまった空気が口から排出される。
「うっぷ……」
なんとか手で口を塞いだもののあたしは顔を赤らめる。
(ど、どうしよう……)
あたしはこの難局を切り抜ける術を一人考える。
でも言い訳なんてしようがない。
だれがどう見てもげっぷはげっぷでしかないんだから。
あたしはこのまま消えてしまいたいと心の中で願う。
「千枝……」
彼がそんなあたしを見かねたのか声をかけてくる。
「は、はい……」
あたしは俯き小さくなったまま返事をする。
「千枝は雨の日に愛家に行ったことがある?」
「えっ、ないけど……」
あたしは戸惑いながらこたえる。
「実は雨の日限定のメニューがある」
「な、なにそれっ!?」
あたしは彼の話題に思わずくいつく。
「今度……一緒に行こう」
彼はあたしの膝の上から弁当箱を取るとハンカチで包み始める。
あたしは彼が器用に弁当箱を包む様子を見守る。
彼があたしのために別の話題を振ってくれたことくらいあたしにだって分かる。
彼の優しさに触れなんだかこれまで以上に彼のことが好きになってしまった気がする。
キンコーン……
あたし達二人の耳にお昼の休憩の終わりを告げるチャイムが響く。
「そろそろ戻ろう」
彼が立ち上がってつぶやく。
「あ、あのね、孝介くん……」
あたしはまわりをきょろきょろして誰もいないことを確認する。
「あの……そこまで……腕を組んでっていい……?」
あたしはちょっとうつむいたまま彼に尋ねる。
「……」
彼は恥ずかしそうにしながらうなずくと左手を少し曲げてくれた。
「じゃあその……失礼しまっす……」
あたしはそっと彼の腕にあたしの腕を絡ませた……。
4.
>放課後
あたしはいつものように屋上で空を見上げる。
あの日以来、あたし達二人は帰宅前にここで顔をあわせるようになっていた。
(まだかな……)
あたしは彼の登場を今や遅しと待ち構える。
まだみんなにはあたし達が付き合ってることは秘密にしてるから、あたしが先に教室を出て、それからしばらくしてから彼が屋上にやってくるのがいつものパターン。
彼はいろいろ忙しいみたいで用がある時はあたしに断ってから一人出かけていく。
そんなことを考えていると歩いてくる彼の姿が目に入る。
あたしはにこにこ笑いながら手を振る彼にちょっと意地悪をしてみる。
「遅い!すっごく待ったのに」
あたしは口を尖らせる。
「ごめん。陽介と雪子にテレビの中に行かないかって誘われて断るのに手こずって」
もともと大して怒ってもいないあたしは彼の言い訳に笑ってうなずいてみせる。
すると彼は安心した表情になってあたしの隣に腰を下ろす。
「んー……疲れた!今日は授業、ちゃんと受けたもんね」
あたしは座ったまま伸びをする。
「やっぱ、キミが隣にいてくれると頑張れる。……へへっ」
あたしは彼に笑いかけながら言葉を続ける。
「月森くんも、あたしがいることで頑張れることとかあると、いいんだけどな」
あたしは言ってしまった後に自分の言葉に照れて少し顔を赤くする。
すると彼はお昼休みと同じようにあたしの肩に手をまわしてくれた。
もちろんあたしはそのまま彼にもたれかかる。
「今日は……なにもないの?」
ひとしきり雑談した後、尋ねてみると彼がうなずいてみせる。
「何もないのに花村と雪子の誘いを断るのはまずいんじゃないっすか?」
あたしは彼を軽くからかってみる。
「……」
彼はあたしの言葉に急に黙り込む。
「な、なんか気に触ること言っちゃったかな……」
突如黙り込んでしまった彼にあたしは少し焦る。
「こんなことでいいのかなって思って」
彼がぼそっと口にする。
「千枝と一緒にいたかったからテレビの中に行かない……ってのはやっぱよくないかな……」
彼はあたしの顔を見て尋ねてくる。
「きゅ、急にそんなこと言われても……わかんないよ……」
あたしは顔を真っ赤にしてこたえる。
でも少しするとあたしの胸は熱いもので満たされ始める。
(彼も……あたしと一緒にいたいって思ってくれてる……)
あたしはにやつく口元を手で覆って隠す。
いきなりにやつきだしたあたしを彼は変なものでも見るかのような目で見る。
5.
「こ、孝介くん……」
あたしは彼の視線に耐えられずに立ち上がると彼を下の名前で呼ぶ。
普段はなるべく月森くんって呼ぶようにしてるけどやっぱり二人のときは下の名前で呼びたい。
「今日は久しぶりにキミの部屋に行って……いいかな……?」
あたしは彼に背を向けたまま彼の反応を待つ。
やっぱり女のあたしから部屋に行きたいって言うのは恥ずかしい。
そもそもあたしと彼はもう肌を重ねた仲なのだから部屋に行くっていうのは当然そうなる可能性が高い……っていうかまず間違いなくそうなるわけで。
少ししても彼からなんの反応がなくあたしは少し焦る。
もしかして軽い女って思われたのかもしれない、と自分の発言を一人後悔し始める。
「千枝……」
彼に名前を呼ばれてあたしは我に返る。
彼はいつの間にか隣に来ていてあたしと目が合うとお昼休みのように腕を少し曲げて見せる。
あたしは笑顔になってそっと彼と腕を絡ませる。
「行こうか」
彼がいつものようにあたしに優しく囁いてくれたからあたしもただ、うん、って返事をした。
>月森孝介の部屋……
「なーんかここ、落ち着くんだよね……」
ソファーに腰を下ろす彼を横目にあたしは彼の部屋を見回す。
「孝介くんの……においがするからかな」
あたしの言葉に彼が少し驚いた表情になる。
「あっ、えっと、別にクサイとかじゃないよ!!むしろすごい好きって言うか!」
あたしは彼が勘違いしないようにフォローする。
でもあたしの言葉に彼はちょっと照れてるみたい。
「あ……」
彼のそんな態度にあたしは自分が言った言葉を再度思い返す。
そして自分の言葉の意味するところをはっきりと理解すると思わず顔が真っ赤になる。
「な、なーんちゃって……あはは……」
あたしはまるでおやじギャグのようなセリフを口にしてごまかそうとする。
でもやっぱり無理。
どうせごまかせないのなら素直に気持ちを伝えようって思いなおす。
だって……あたし達恋人同士なんだから。
「すごい、好き」
あたしは小さな声でつぶやく。
「……キミが……好きだよ……」
小さな声で言うと伝わらないと思いあたしはわざとこの前と同じ言葉を使う。
「千枝……」
彼はソファーから立ち上がるとあたしを優しく抱きしめてくれる。
「千枝はちょっと抜けてるけど……まっすぐで素直なところがすごくかわいい」
彼はあたしを抱きしめたまま優しく囁いてくれる。
「ぬ、抜けてるって……なによぉ」
あたしは少し彼に抵抗する。
「匂いが好きとか……げっぷしちゃうとことか……」
彼が少し笑ってみせる。
「そ、それは……」
あたしは彼と顔をあわせるのが恥ずかしくて思わず下を向いてしまう。
でも彼にかわいい、っていってもらえたことが嬉しくておずおずと彼の背に手をまわす。
彼と強く抱きしめあうと彼の心臓の鼓動があたしに伝わってくる。
今この鼓動を感じているのはあたしだけだ、そう思うとあたしは幸せな気分になる。
6.
「千枝……目をつぶって……」
彼があたしに囁く。
実のところあたしはキスが好きだ。
まだ数回しかしてないけど彼と唇を重ねることにはなんだかそれ以上の意味があるような気がする。あたしが期待を胸にそっと目を閉じると……彼はあたしにキスしてくれた。
しばらくして唇が離れると……彼はあたしを胸に押し付けてきた。
彼に比べ小柄なあたしは彼の胸に顔を埋めるような格好になる。
「どうして雪子じゃなくてあたしなの……?」
彼に抱きしめられ幸せいっぱいのあたしはずっと疑問に思っていたことを尋ねてみる。
「どうしてそんなこと……?」
彼が逆にあたしに尋ねてくる。
「だって雪子の方が美人でおしとやかだし……。あたしなんていつも汗まみれで花村からも女だって思われていないのに……」
あたしは言ってるうちに自分で落ち込んでしまいそうになる。
彼はそんなあたしの髪を優しく撫でてくれる。
「千枝は……自分のことをかわいくないって思ってる?」
「えっ」
「雪子より魅力がないって思い込んでる……?」
彼はあたしのあまり触れて欲しくない部分にするっと入り込んでくる。
いつの間にか彼のことを好きにさせられてしまった時と同じように……。
「しょ、しょーがないじゃない」
あたしは俯いたまま言葉を続ける。
「雪子と一緒にいても男の子から声をかけられるのは今までずっと雪子だけだったんだから」
あたしの中で苦い記憶が蘇る。
あるときちょっといいと思ってた男の子に話しかけられ仲良くなったことがある。
ささやかな幸福に浸っていたけど……結局それは雪子に近づくための彼の作戦だった。
もちろん彼はあっさりと雪子に振られた。
雪子は覚えてないけど、あの時のことを思い出すとあたしの心は今でもひどく傷つく。
「もしかして孝介くんも本当は雪子のこと……」
そこまで言ってあたしは言葉を止める。
もし彼にうなずかれてしまったらあたしは立ち直れないって思ったから。
彼は驚いた表情であたしを見てる。
あたしはそんな彼の視線に耐えられず彼から視線を逸らしつぶやく。
「……なんだか……不安なの」
あたしは彼に今、感じていることを素直に告げる。
「だって……孝介くんみたいな人があたしを好きになるなんて信じられないから……」
彼は黙ってあたしのことを見てる。
そしてあたしの頬の辺りに手を添えるとあたしに諭すように語りかけてくる。
「一つだけ、勘違いして欲しくない」
彼ははっきりとした口調で言葉を続ける。
「俺が付き合っているのは雪子じゃなくて千枝なんだ」
「う、うん……」
あたしは子供みたいに素直にうなずく。
「千枝が思ってるよりも遥かに……月森孝介は里中千枝に夢中なんだ」
そういうと彼は……あたしに優しくキスしてくれた。
あたしは……ただ彼の優しさを全身で感じていた。
7.
「ごめんね」
唇を離すとあたしは彼に謝る。
「結局あたしは心のどこかでキミの言葉を信じてなかった」
あたしは言葉を続ける。
全部彼に話さないといけないと思うから。
「昔みたいに傷つくのが怖くて……保険をかけてたの」
彼はあたしの言葉を黙って聞いてくれてる。
「あたしの家の前であそこまで言ってくれたあなたの気持ちを信じられないなんて……」
こんなにも彼のことが好きなのに彼のことを疑ってしまう自分が恥ずかしい。
「なんでも言うこと聞くから……なにか言って。このままじゃあたしが納得できない」
あたしは彼になにか詫びたいと思い彼に尋ねる。
しかし彼は首を横に振るだけでなにも言わない。
「それじゃああたしの気がすまないの」
あたしの言葉に彼は悩んでいたようだけど何か思いついたのか口を開く。
「それじゃあ……」
「それじゃあ?」
「今度また弁当を作った時、付き合ってもらおうかな」
そう言って彼が笑う。
「そ、そんなんじゃ……」
あたしは彼を見つめる。
「もう……いいから」
「でも……」
「千枝がそばにいてくれたらそれでいいんだ」
彼は恥ずかしそうにつぶやく。
あたしは彼のその言葉に心をわしづかみにされた様な気分になる。
あたしは彼が好きで彼はあたしのことが好き。
たったそれだけのことなんだ。
あたしは彼の言葉を胸にかみしめる。
「千枝……」
彼はそうつぶやくといきなりあたしの足に手を掛ける
「な、なに……?」
彼の意図が読めずあたしは自分の足が床から離れる感覚に目をつぶる。
気がつくとあたしは彼に抱き上げられていた。
そして彼はあたしを抱き上げたままソファーに移動し腰を下ろす。
「び、びっくりさせないで……」
あたしはちょっと彼に不平を言う。
でも彼はそんなあたしを黙らせるようにキスしてきた。
「もう……我慢できないんだ……」
彼は何度も何度もあたしにキスする。
あたしは黙って彼を受け入れる。
8.
何度かのキスの後、あたしは彼にソファーに押し倒された。
のしかかってくる彼の姿を確認するとあたしは目を閉じる。
もう……言葉はいらないって思うから……。
彼は無言であたしのセーラー服をたくしあげる。
すると当然のようにあたしの下着があらわになる。
彼は前回手間取ったことを反省したのかあたしのブラをずらしてゆっくりと愛撫してくる。
「あっ……」
あたしはその感触に思わず声をあげる。
彼はあたしの両の乳房を同時に下から包み込むようにして揉み上げる。
なんだか初めてのときより遥かに気持ちよくてあたしは彼の愛撫に身を委ねる。
気がつくとあたしはあっと言う間に息遣いが荒くなっていた。
ふと目を開くと彼と視線がぶつかる。
(やだ、は、恥ずかしい……)
彼は明らかにあたしの反応を確認しながらあたしを愛撫してる。
あたしは間違いなく顔が真っ赤になっていることを認識する。
彼に胸を触られて感じている表情をじっと見られてたなんて恥ずかしすぎる。
「千枝っ……!」
彼は興奮した口調であたしの名を叫ぶと、再びあたしにキスしてきた。
今度はあたしの口の中に舌を侵入させてくる。
彼はまずあたしの歯茎をじっくり舐めまわすと続けてあたしの舌に彼の舌を擦り付けてくる。
彼に舌を弄ばれる感覚にあたしの体は思わずビクっと震えてしまう。
でもいつしかあたしは彼の舌にこたえはじめていた。
「んんっ……はぁはぁ……」
彼の部屋にあたしと彼の荒い息遣いが響く。
あたし達二人は息を弾ませながらお互いの舌を貪りあう。
それはあたしが今までドラマとか映画で見てきたようなきれいなキスとはまるで違う。
ただお互いの快感だけを求め、あたし達は唇を重ね舌を絡ませ求め合う。
気がつくとあたしは彼とのキスにすっかり夢中になっていた。
彼に舌を吸われたり彼の舌をすったりするのがこんなにも気持ちいいなんて思いもしなかった。
不意に彼がキスしながら乳首への愛撫を始めてきた。
彼は指であたしの乳首をつまみ擦り上げてあたしをびくつかせる。
「はぁっ……!」
あたしの口からえっちな喘ぎ声が矢継ぎ早に漏れ始める。
もちろん彼がその隙を見逃すはずがない。
あたしは彼にいやというほど舌を吸われ、彼の口の中で舌を散々に弄ばれる。
結局あたしは彼の思うままに一方的に感じさせられてしまう。
9.
「千枝……」
彼は唇を離すと興奮した口調であたしの名前を呼ぶ。
乳首をくりくりとつまみ耐え難い快感をあたしに送り込みながら……。
あたしは彼に一方的に感じさせられてしまったことが恥ずかしくて聞こえない振りをする。
すると彼は今度はキスをやめ、あたしの両方の乳首を同時に弄り始めていた。
彼はあたしを正面に見据え、何も遮るものがなくなったあたしの乳首をじっくりと責め始める。
「くはっ……!んんっ!!」
あたしの口から甘い喘ぎ声が漏れる。
前回も気持ちよかったけど今日はもっともっと気持ちいい。
すっかり固くなってしまったあたしの女の象徴を同時につまみ上げられるとあたしは体をのけぞらせる。
彼に指先で乳首をくりくりこねくりまわされるとあたしは我慢できない快感に襲われる。
「千枝がものすごく感じてくれるから……すごく自信がつく」
彼はまたも興奮した口調でつぶやく。
しばらくすると彼はあたしの乳首を口に含んで舌先で嬲り始めた。
「はぁん……!!」
あたしは体を震わせて嬌声をあげる。
もはや指だろうが舌だろうが関係ない。
あたしの乳首は彼の愛撫にあまりにも敏感に反応してしまう。
人様と比べて大きいわけでもないのにひどく敏感なそれをあたしは呪う。
彼はあたしの反応を愉しみながら両方の乳首をじっくり指と舌で弄りまわし唾液まみれにする。
彼に感じている様子を観察されていることにあたしは更に興奮する。
「孝介くん、あ、あたし……!!」
あたしは情けないことに喘ぎながら体をくねらせることしかできない。
不意に彼の愛撫が止まりどうしたのかと目を開くと彼は体を起こしシャツを脱ぎ始めていた。
カッターシャツとTシャツを脱ぎ捨てると彼の逞しい上半身があらわになる。
余計な肉のついていないその肉体にあたしはしばし見とれてしまう。
でも彼はあたしのそんな様子に気づかず今度はあたしを脱がせ始める。
「ごめんね……」
あたしは彼に脱がされながらつぶやく。
「孝介くんはそんないい体してるのにあたしはその……みんなと比べて胸も小さいし……」
あたしは素直に感情を吐露する。
セーラー服と下着を脱がされたあたしは上半身裸にされてしまっており小ぶりな乳房も当然のように彼の眼前に晒されている。
でも彼はそんなあたしに首を振って体を密着させてくる。
「大きいと小さいとかじゃなくて……千枝の体に触れていたい」
彼はあたしを抱きしめると耳元で囁いてくれた。
「孝介くん……」
あたしは彼に強く抱きつく。
彼の体と衣服を介さず直接触れ合うとなんだか彼の優しさに包まれているような気がしてくる。
あたしは覚悟を決めて彼につぶやく。
「いいよ……。全部……脱がせて……」
彼はあたしの言葉にただこくりとうなずくと、あたしの体を覆う衣服をすべて取り去ってしまった。
10.
「千枝きれいだよ……」
彼は全裸になったあたしを見下ろしてつぶやく。
「そ、そんなことないよ……」
彼に全てを見られてあたしは照れてみせる。
彼はそんなあたしの反応に興奮したのか突如あたしの両方の足首をつかむと股を思いっきり開かせあたしの股間をじっくりと眺め始める。
「い、いや……」
あまりに恥ずかしい体勢にあたしは彼に抵抗しようとする。
普通の男の子にならまず負けないけど彼はわけが違う。
体をばたつかせて抵抗したけど結局あたし一人が体力を消耗するだけだった。
結局あたしは彼の力には敵わず恥ずかしい姿を晒す屈辱に耐える。
彼はあたしの秘所をじっくりと見ている。
指で触るわけでもなく、ただじっと……。
気がつくとあたしはだんだんおかしな気分になってくる。
さっきまで体をじっくりと愛撫されあたしの体はすっかりその気になってしまっている。
平たく言うとあたしの体は新たな刺激を求めている。
それなのに彼はあたしの秘所を眺めるだけで何もしてこない。
(こ、こんなの……いや……)
あたしはどこでもいいから彼に愛撫して欲しい。
かと言って彼に触って欲しいなんてとてもじゃないけど言えない。
「こ、孝介くん……」
あたしは一縷の望みを賭け彼の名前を呼んでみる。
「……?」
彼があたしの顔を見る。
「な、なんでもない……」
あたしは仕方なくそうつぶやく。
すると彼がやっとのことで反応する。
「ごめん、つい見入ってしまって……」
彼はそうつぶやくと……あたしの一番敏感なところを舐め始める。
「はうっ!」
あたしは思わず奇声を発してしまう。
股間を大きく開かされたまま最も敏感な突起を舐められる事態にあたしの顔は羞恥に赤く染まる。
「だめ、そ、そんなところ……」
あたしは無我夢中で叫ぶ。
でも彼は止めてくれない。それどころかあたしの反応を楽しんでいる節さえある。
彼は舌先であたしの敏感なところを舐めまわしたり押しつぶしたりしてより一層の刺激をあたしに与えてくる。
「も、もう許して……!」
あたしは彼に助けを求める。
冗談抜きで頭がおかしくなりそうなほど気持ちいい。
あたしは股間から快感が全身に広がっていくような錯覚に陥る。
彼はそんなあたしの様子にさらなる責めを加えてくる。
「くっ……」
あたしの顔が快感にゆがむ。
舐められているだけで気持ちいいのに……あたしは秘所に指を挿れられてしまっていた。
こんなの……耐えられるわけがない。
「や、やん……くはっ!」
あたしは信じられないほどえっちな声をあげ続ける。
「千枝の中……びしょびしょに濡れてる……」
彼は膣壁を指でいじりまわしながらしてほしくない実況中継をしてくる。
(そ、そんなに濡れてるんだ……)
あたしは羞恥と快感に体を震わせる。
(そんなに濡れてるなら今日は……)
あたしは押し寄せる快感の中、今日は最後までできるかもしれないとなんとなく予感する。
11.
「千枝……そろそろ……」
彼があたしに尋ねてくる。
「う、うん……」
あたしはやっと舌から開放され意味も分からず彼にうなずく。
彼はあたしの体から離れるとなにかごそごそし始めるけどそんなことどうでもいい。
これ以上彼にはしたない姿を晒さないで済んだことにあたしは満足していた。
彼はそんなあたしの股を開かせ当然のように彼の男をあてがう。
「いくよ」
「う、うん……」
あたしがうなずくと彼はゆっくりと挿入してきた。
「くはっ!」
あたしは股間に違和感を感じて思わず声をあげる。
でも前の時みたいにものすごく痛いわけでもない。
「大丈夫?」
彼があたしを心配して尋ねてくる。
「この間より……全然平気……」
あたしは素直に彼にこたえる。
「全部挿れても……大丈夫……?」
「うん」
あたしがそうこたえると彼はおそるおそる根元まで突き入れてきた。
彼の男があたしの中に押し入ってくる。
「痛く……ない……?」
彼の心配してくれる言葉がなんだか嬉しい。
「ちょっとそのままにしてて」
あたしは彼に頼む。
まだ少し痛みがある。
でも前回と比べたらこんな痛みなんともない。
「いいよ、動かして」
あたしはどんな痛みにも耐える覚悟を決め彼につぶやいた。
「はぁはぁ……」
彼の喘ぎ声が耳に入る。
あたしはどんな痛みにも耐えて見せるつもりだった。
だから最初痛みを伴ったときも彼に悟られないよう必死に我慢した。
でもそれはほとんど必要のない努力だった。
しばらくしてあたしの体を支配したのは……痛みではなく悦びだった。
「痛くない、痛くないよ!」
あたしは彼に痛みがないことを告げる。
そんなあたしの言葉に彼は安心したのかあたしの奥のほうまで突いてくる。
あたしの股間がグチュグチュと卑猥な音を立て始める。
「千枝、すごく……気持ちいい」
彼があたしに快感を告げてくる。
彼と一つになった悦びにあたしの体は震える。
ものすごく気持ちいいわけではない。
でも大好きな彼に愛される悦びは他のどんなことにも勝った。
12.
「千枝……」
彼は急にあたしの背中に手をまわすとあたしの体を起こしてきた。
彼が体の位置を調整するとあたしは彼に跨る形になる。
彼はあたしの体を確保するとあたしにキスしてきた。
彼とつながったままのキスはなんだか今までとは違う格別の味がするような気がする。
「おれに抱きついて……」
彼に言われるままにあたしは彼にしがみつく。
すると……彼は小柄なあたしのおしりを両手で支え、あたしを体毎上下させ始める。
「ひゃっ!」
彼の男があたしの膣壁にこすり付けられる感触がとてつもなく気持ちいい。
彼に貫かれることに快感を感じたのは初めてであたしはその快感に夢中になる。
どうやらあたしの秘所が痛みではなく快感を伝え始めたらしい。
指や舌でいろいろなところを弄られたけど挿入による快感はまた格別だった。
体温が一気に上がってしまったような感覚に陥り体全体が興奮し始める。
彼もあたしがすごく感じてることに気づいたみたいで同じところをしつこく擦り付けてくる。
「千枝はここがいいんだ」
彼の言葉にあたしは顔を赤らめてうなずく。
彼はあたしがうなずいたのを確認するとあたしの体の上下運動を早め始める。
「ああんっ……あっあっあっ……」
気がつくとあたしは彼に喘ぎ声を聞かせ続けていた。
あたしは成す術もなく彼に高められ、その快感にのめりこむ。
でも彼は、もうだめだ、と言うとあたしを再度押し倒してきた。
彼はあたしを組み敷くと抱きしめたまま腰を動かし始める。
「あん……くはっ……ああっ!!」
あたしは快感に我慢できず無意識のうちによがり始めてしまう。
「もっと……もっと奥まで突いてっ!」
あたしはもっと気持ちよくなりたくなって彼を激しく求める。
「おおおおおっっっ」
彼が突如、野獣のような雄たけびを上げる。
彼はあたしの言葉にこたえるようにあたしの手首をつかみ押さえつけるとを何度も何度も深々と貫く。
彼に望みどおり奥まで貫かれ、あたしの興奮も一気に頂点に達する。
「いいっ!すごくいいっ!!」
あたしも負けじと彼にこたえる。
彼の手が手首からあたしの手に辿りつくと、あたし達はお互いの手を指先まで重ね、いつしかしっかりと握り合う。
「好き、大好きっ!!」
彼の腰の動きにあわせあたしも腰を彼に押し付けながら、快感に酔いしれる。
一番奥を突かれると脳がとろけてしまいそうになるくらい気持ちいい。
「千枝……そんなに締め付けると……」
彼が悲鳴をあげる。
でもあたしだって今にもおかしくなってしまいそう。
あたしはいつしか事件のことも雪子のこともすっかり忘れ、彼に抱かれる悦びと快感を味わいつくすことしか頭になくなっていた。
「で、出るっ!」
彼が急に叫び声を上げる。
あたしの中で彼の男が一際大きくなった瞬間、あたしはあまりの快感にがくがくと体を震わせがら頭の中が真っ白になる。
「ああぁぁっっっっ!!」
「ち、千枝っっ!!!」
彼の声が耳に入ったのと、あたしが体をのけぞらせ意識を飛ばしたのはほぼ同時だった。
13.
気がつくとあたしは彼の体の下で息を弾ませていた。
体はまだびくんびくんと震えたまま。
「こ、孝介くん……」
あたしは彼にぎゅっと抱きつく。
「その……すごくよかった」
彼があたしに囁く。
「あ、あたしも……」
あたしは顔を赤くしながら彼に同意する。
「あっ!」
あたしはとんでもないことに気づく。
「もしかして……中に出しちゃった……?」
あたしは真っ青になって彼に尋ねる。
すっかり夢中になってそんなこと考えてもいなかった。
「うん……」
彼がちょっと申し訳なさそうな表情でこたえる。
「う、うそ……」
もし妊娠してたら、親に話して学校に話して……などと考えると目の前が真っ暗になる。
「に、妊娠してたらどうしよう……」
あたしは縋るような眼で彼を見る。
しかし……彼はそんなあたしの様子をフフフと笑う。
「な、なにがおかしいのよっ!?」
あたしは彼に食って掛かる。
そんなあたしに彼はなにか小さな白いビニールみたいなのを見せてくる。
「ちゃんとしてるから」
そういって彼が微笑む。
「か、からかってたの……」
あたしは彼の前でうなだれる。
「ごめん、千枝が心配してる様子がかわいくてつい……」
そう言って彼が謝ってくる。
「もう……あんまり驚かせないでっ」
あたしはそう言って彼に抱きつく。
「でも……こんなとこまで冷静なんだね」
あたしがくすりと笑うと彼が少し赤くなる。
「ねえ、孝介くん……」
彼と全裸で抱き合ったままでいるとあたしはまたもえっちな気分になってきた。
「もう1回……する……?」
あたしは顔を赤くしながら彼に尋ねる。
すると……彼は返事もせずにあたしにキスしてくる。
しかし……
「おおい、孝介。いるか?」
突如堂島さんの声が響く。
「2階か、ちょっと降りてこい」
「ま、待って、すぐ行くから」
彼が慌てて階下に叫ぶ。
あたし達は急いで衣服を身に付け始めるのだった。
「主人公×千枝 ランク11」 完