S01 訪問販売員 坂本 1. 「奥さん、おれ、もうだめです 坂本がさよりを相手に断末魔の悲鳴をあげる。 「ああ、坂本さんっ……!!」 さよりも坂本と同時に絶頂の快感を得る。 「では、また来ますんで次回もよろしくお願いします」 坂本がいかにも事務的な口調で先ほどまでベッドをともにしていたさよりに別れを告げる。 「また……お願いします……」 坂本は複雑な思いの絡まったさよりの声を確認すると玄関のドアを閉めあるマンションの一室を後 にする。 「ふぃ〜疲れた疲れた」 道路に出た坂本はネクタイをゆるめ舌を出す。 先ほど坂本が人妻のさよりを抱いていたのはさぼりではなく仕事の一環だ。 長引く不況のため坂本はやっとの思いで就職した会社を解雇され、ある先輩のつてで今の仕事に就 いている。 その仕事とはずばり宝石の訪問販売。 そのいかがわしいイメージ同様、坂本の仕事は半分詐欺みたいなものであった。暇と金をもてあま す主婦に安価な宝石を高く売りつける。 まさに詐欺だ。しかし、なぜか宝石は結構売れる。それは坂本の若い肉体も宝石の値段に含まれて いるからだ。 世の中には夫に全く構ってもらえない女性が少なからず存在する。そんな女性たちが坂本の若い肉 体を宝石と一緒に買うのだ。 信じられないことに傍目には裕福でなんの不満のなさそうな人妻が折りを見て坂本を誘ってくる。 先ほどの女性さよりもご多分に漏れずその一人。 彼女一人で坂本の一ヶ月の売り上げの大部分を担ってくれている大切な常連様だ。 坂本が持参した宝石などそっちのけで坂本の若い肉体にむさぼりついてくる他の中年おばさん達と 違いさよりにはまだ夫を裏切っているとの背徳の感情が残っている。 そのさよりを好きなように抱く快感を忘れられず坂本は週に何度かさよりのもとへと通ってしま うのだ。 2. (もうあの人のところに行くのはやめよう) 坂本は何度目かわからない決意を再度固める。 特定の女性とあまりに深く関わりすぎるとトラブルの元だというのを坂本も十分に承知している。 宝石が売れたらもう二度と顔を出さないのが最もベストなのは今までの経験からも明らかだ。 しかし……坂本はいつまでたっても彼女との関係をやめられない。 それは坂本に今、親身になってくれる彼女がいないことにも起因する。 もしそのような女性が近くにいればさよりにとの関係も清算できると思う。 しかし、訪問する自分を丁重にもてなし、罪悪感を感じながら自分に抱かれるさよりを坂本は切り 捨てることが出来ない。 坂本はさよりに心惹かれてしまっている部分があるのだ。 お互いのためにも合わない方がいいことはわかりきっているがそれができないジレンマに坂本は苦 悩する。 (おれにも管理人さんのような人がいたら……) 坂本は長年の友人である五代を思い浮かべる。 学生時代から何をやっても自分の後ろにいた五代が就職を決めるや否や自分が全く付き合ったこと のないような美女と結婚してしまったのだから坂本としてはなんとも言えない気分になるのはいた し方のないことであった。 坂本は五代が幸せになってくれて本当に嬉しく思う。 しかし胸にこみ上げる悪意にも似た感情を完全に消し去ることができるほど人間ができているわけ でもない。 「くそっ」坂本は自己嫌悪に陥り唾を道に吐き捨てる。 そしてたまたま目に入った高級マンションに足を踏み入れる。 3. ピンポーン 坂本は何件目かの部屋のインターフォンを押す。宝石を売るにはある程度裕福な家庭の主婦でなけ ればならない。 しかし、最近のマンションは玄関に管理人ががんばっていることが多く売る相手を探すのも容易で はない。 今日、このマンションにはいれたのは坂本にとっては幸運であった。 たまたま管理人のおじいさんが病気で休んでいたため売り込むことが出来るからだ。 いつもなら建物の入り口でお払い箱なことを考えると坂本はこの幸運を何とかいかしたいと願いイ ンターフォンを押す。 しかし…… 「うちは結構です」 「間に合ってるから」 当然のごとく反応は悪い。 だが坂本はめげずに順番に一軒ずつ訪ねて回る。 脳門販売なんだから足で稼ぐしかない。 1時間後、既に半分くらいの家庭に断られ続けた坂本が今日もダメかと思いながら次の部屋のイン ターフォンを押す。 すると…… 「はい……」 坂本の耳に若い女性の声が耳に入る。 それもインターフォン越しではなく背後から。 「うちに何か御用ですか?」 (こんな若い奥さんじゃダメだな) 坂本は内心舌打ちををしながら、しかしそれを微塵も感じさせずに振り返る。 「実は弊社が自信を持ってお勧めする宝石を皆様に紹介させてもらっているのですが……」 そこまで言って坂本の言葉が止まる。 その女性を坂本はどこかで見覚えがあるのだ。 「あれ、どこかでお会いしたことありませんか?」 そう言って坂本は表札を見る。 「三鷹」と表札にはある。 すぐには思い出せない。 しかし記憶の紐を辿っていくと五代の結婚式の二次会でこの女性を見たことを思い出す。 4. 「もしかして……三鷹さんの奥さんじゃありませんか?」 「えっ……主人をご存知ですの?」 その女性、三鷹明日菜が坂本に質問を返す。 「あの……五代の結婚式の二次会に来てらしたと思うんですが」 「五代……」 明日菜は一瞬考え込む。 しかし、なんとか記憶を掘り起こすことに成功する。 「あの……音無さんが結婚された方……でしたっけ?」 明日菜がかわいらしく首をひねりながら坂本に尋ねる。 「そうそう、管理人さんの前のだんなさんの苗字が確か音無でしたね」 坂本が明日菜にあわせる。 「そうでしたか、音無さんのだんな様のお友達でしたらあの二次会で会っててもおかしくないです ね」 そういって明日菜がにっこりと笑う。 「ここにお住まいなんですか?」 坂本が明日菜に尋ねると他の部屋の住人が廊下で立ち話をする二人を変な目で見ながら通り過ぎる。 「すみません、おれ、迷惑ですよね」 「そんなことありません。わたし、昼間は話し相手がいなくて……」 そこまでいって明日菜は言葉をとめる。 出すぎたまねかと思いついもじもじしてしまう明日菜。 しかし、思い切って坂本に声をかける。 「中でお茶でもいかがですか?」 「いいんですか?」 坂本が思いもよらない展開に驚く。 「ええ、ちらかってますけどどうぞ」 そういって明日菜がドアの鍵を開けて坂本を部屋に誘う。 5. 「少し待っててくださいね、お茶を用意しますから」 明日菜が坂本にキッチンから声を掛ける。 「いえそんな、お構いなく」 坂本は遠慮するがもう明日菜は準備を始めている。 ほどなくして坂本に香りの良いコーヒーが出される。 「どうぞ」 明日菜がにっこりと笑う。 「あっ、どうも……」 坂本はとりあえず礼をいう。 坂本にはわからない。 ほとんど顔も知らないような自分に笑顔でお茶を出す明日菜の心境が。 「あの……どうしておれなんかのためにそんな風によくしてくれるんですか?」 「そんなつもりはないんですけど……」 そういって明日菜が窓の外を見る。 するとそれとほぼ時を同じくして別室から赤ちゃんの鳴き声が聞こえ始める。 「あらあら……」 明日菜が別室に飛び込む。 「どうしたのメイちゃん」 明日菜が赤ちゃんをあやす声が坂本の耳に入る。 (そういや、あの時妊娠してたっけ……) 坂本は漠然と思い出す。 「あの……おれ、もう失礼します」 坂本がリビングから明日菜に声を掛ける。 「すいません、ちょっとお待ちになってくださいな」 明日菜が別室から坂本を呼び止める。 「うわぁぁぁぁぁん」 すると今度は双子のもう一人、モエが泣き声をあげ始める。 「あらやだ、もうどうしましょ」 明日菜はお客さんが来ているのにもかかわらず泣き声をあげるかわいい我が子を必死にあやす。 (大変だな……)坂本は差し出されたコーヒーに舌鼓を打ちながら育児の大変さをなんとなく知る。 そして程なくして泣き止んだ様子に坂本は別室を覗きながら明日菜に声を掛ける。 「赤ちゃん、落ち着きましたか?」 「しー……」 明日菜が坂本に向かって静かにするようにジェスチャーを送る。 「えっ……」 坂本は思わず唖然とする。 明日菜は衣服をはだけて授乳の最中だったのだ。 思わず坂本の視線が明日菜の乳房に釘付けになる。 「や、やだ……」 明日菜は坂本の視線に気づき体の向きを変え胸を隠す。 「す、すいません。つい……」 坂本が背中を向けてそのまま明日菜にわびる。 「その、いいですから……あっちの部屋に戻ってください」 明日菜が顔を赤くしながら坂本に言う。 6. 「さっきはすみませんでした」 坂本が明日菜に謝る。 「いえ……わたしが不用意でした」 そう言って顔を赤くする明日菜。 「実は主人が今、アメリカにテニスの研修に行ってるんです。だから知ってる人に会えてなんだか 嬉しくなって引き止めてしまって」 「そうなんですか」 「アメリカで研修とはしがないセールスマンとは全く別世界ですね」 坂本が自嘲して笑う。 「そんな……」 そしてなんとも言えない沈黙。 その沈黙に耐え切れず坂本が明日菜に尋ねる。 「いつから三鷹さんはアメリカへ?」 「先月中ごろからなんです」 明日菜が問われるままに応える。 「じゃあもう一ヶ月も。寂しいですね」 坂本が同情する。 「ええ……。ですから知ってる人に会えてなんだか嬉しくて」 そういって明日菜が小さく微笑む。 「いつ、お帰りになるんですか?」 「……来月の中ごろに……」 明日菜が寂しくつぶやく。 「そうですか……」 坂本はため息をつく。 (こんなかわいい奥さん放ってアメリカに行くとは三鷹さんも罪な男だな) 坂本は柄にも無く三鷹に対して怒りを抱く。 そしてなんとなく部屋の中を見回す。 趣味のいい調度品に電化製品。 坂本が逆立ちしても手にいれることが出来ないものがところ狭しと並んでいる。 (相当裕福なんだな) 坂本は三鷹家に今度は激しい嫉妬心を抱く。 なんだかいろいろ忙しい。 「……坂本さん?」 「は、はいっ」 坂本は明日菜に名前を呼ばれて現実に引き戻される。 「さっき、宝石をお売りしてるって言ってました?」 「ええ……」 「これもなにかの縁ですし、よかったら見せてもらえますか?」 「でも……」 坂本は躊躇する。 親しいわけではないが知り合いに宝石を売りつけるのはやはり抵抗がある。 「坂本さん、お仕事ですよ」 そういって明日菜が笑ってみせる。 「じゃあちょとだけ……」 7. ピンポーン 午後6時、三鷹家のインターフォンがなる。 「はい、どちら様ですか?」 インターフォンから明日菜のかわいらしい声が響く。 「あ、坂本です」 「はい、今あけますね」 ガチャリ…… ロックを下ろす音がしてドアが開く。 「坂本さん、いらっしゃい」 明日菜が坂本を中に迎え入れる。 「三鷹さん、今日は自信ある奴を持ってきました」 そういって坂本が明日菜に頑丈な鞄を見せる。 「そうだといいですね」明日菜が笑う。 「これでどうですか?」 坂本が鞄を開き明日菜に宝石を並べてみせる。 実は昨日持ってきた宝石は明日菜の目にかなうものがなく今日改めて坂本が会社で用意できる最高 級のものを用意してきたのだ。 「昨日のとは違いますね……」 そういて明日菜が宝石をじっくりと見定める。 (あの馬鹿社長によると最高級らしいが……) 坂本は熱心に宝石を見定める明日菜を見る。 一個でも売れれば坂本のノルマ二か月分なのだ。 坂本は明日菜の反応を見逃すまいと集中する。 そうしているうちに坂本は思い知らされる。 明日菜の若さと美しさを……。 昨日受けた感じではかわいらしい女性であった。 しかし今日改めてみると昨日と違った感じに見える。 おそらく今日は自分がくるのが判っているため化粧をしているのだろうと坂本は考える。 しかし見れば見るほど明日菜は美しい。 普通の家庭に育ったのではなく由緒ある家柄なのではないかと坂本は想像する。 「坂本さん」 明日菜が坂本に声を掛ける。 「な、なんですか!?」 坂本は突然呼ばれて動揺を隠すために大きな声で聞き返す。 「そんなに見つめられると集中できませんわ」 そういって明日菜が上品に笑う。 「す、すみません」 坂本が明日菜に謝る。 「そんなに恐縮しなくていいですから」 「はい……」 8. 資産家のお嬢様である明日菜の宝石を見る目は確かで、今回坂本が持参した宝石も残念ながら明日 菜には物足りなかった。 しかし、幸運にもひとつだけデザインが明日菜好みのものがあった。 「坂本さん」 「はい……」 坂本は審判を待つ囚人のような表情で明日菜の声を聞く。 「これを……はめてみていいかしら」 そういいながら明日菜がダイアの指輪を指差す。 「も、もちろんです」 そういって坂本がダイアの指輪を明日菜に手渡す。 「きれい……」 明日菜がうっとりして指先で光る指輪を見つめる。 「よく似合ってますよ……」 いつのまにか明日菜の隣に腰を下ろした坂本が明日菜の耳元で囁く。 「わたし……宝石に負けてないかしら……」 明日菜がつぶやく。 「宝石の方が……負けてしまいそうです……」 坂本はそう言ってごく自然に明日菜の背に手をまわす。 これが……坂本のいつもの手なのだ。 ほとんどの女性は宝石に弱い。 今回は指輪だが女性は宝石を身に着けると宝石に夢中になるあまり男に対して無防備となる。 その瞬間を坂本は見逃さない。 宝石と同時に女性の美しさを褒めながらスキンシップを図る。 それだけで……今まで坂本は数多くの人妻と関係を持ってきた。 そして……それは明日菜にも例外なく当てはまる。 9. 「わたし、なんだかこの指輪がすっかり気に入ってしまいましたわ」 明日菜がため息をつく。 「ありがとうございます。……でも、三鷹さんのほうが宝石よりきれいです」 坂本が明日菜の肩を抱いたまま囁く。 「そ、そんなことありません」 明日菜が謙遜して頬を染める。 しかし面と向かって綺麗だといわれて嬉しくない女性がいるわけがない。 ただでさえ、明日菜は今気に入った指輪を身につけ浮かれているのだ。 坂本はお世辞抜きで明日菜を美しいと思う。 今まで営業としてお世辞で言うことがほとんどであった。 しかし今回ばかりは本心であった。 そしてそれが勝敗を決めた。 いつものようにお世辞であったなら明日菜の心は動かなかっただろう。 さらに一ヶ月にも渡る夫の留守。 それが明日菜の心に隙を作ってしまい……坂本の言葉に明日菜は心を揺さぶられてしまったのだ。 「失礼ですが、名前はなんておっしゃるんですか」 坂本が明日菜の頬を撫でながら尋ねる。 「明日菜……」 明日菜は照れてうつむきながらつぶやく。 「明日菜さん……。名前まで綺麗なんですね……」 そういうと坂本は……明日菜の顎を人差し指で持ち上げ顔を上げさせる。 そして……そのまま明日菜に口づけをする。 10. 何度かの口づけのあと、明日菜は正気に戻る。 「だ、だめです……」 明日菜は坂本の体を押し返す。 ここまで来て拒否した女性は坂本には初めてだ。 しかし、焦ることはない。 坂本から見れば明日菜はもう底なしの泥沼に足を踏み入れてしまっているのだ。 「わかりました」 そういって坂本は明日菜の言うとおり体を離す。 「明日、書類を持って再度伺います」 坂本が突如事務的な口調になる。 「うちの会社にしては高額な宝石ですのでいろいろと手続きがあるんです」 「はあ……」 明日菜は上の空で坂本の話を聞く。 「明日菜さん」 坂本が明日菜の顔を覗き込む。 「な、なんですか……?」 明日菜が瞳を逸らして尋ねる。 なりゆきとはいえ夫以外の男性に唇を許してしまったことに今さらながら罪悪感を感じてしまった のだ。 「嫌なら……明日同じ時間におれが来たとき……この部屋にいれないでください」 「なっ……」 「また18時に来ます」 そういって坂本は片づけを始める。 そんな坂本に明日菜はなんと声を掛けていいのかわからない。 「この指輪は持って帰らないんですか?」 明日菜が自分の指にはめられたままの指輪に気づき坂本に尋ねる。 「一晩、その指輪を見て……じっくり考えてください」 坂本がいつもの調子のいい笑顔で言う。 「……」 「では失礼します」 そういって坂本が玄関を出る。 明日菜はただ黙って坂本が出て行くのを見守るのであった。 11. 明日菜は指で光る指輪をじっと見る。 なんだかとてもいいものに見えて仕方ない。 「嫌なら……明日同じ時間におれが来たとき……この部屋にいれないでください」 先ほどの坂本の言葉が脳裏をよぎる。 (嫌なら……) 明日菜は頭の中でその言葉を繰り返す。 何が嫌なのか。 その答えは明らかだ。 明日菜だって男と手を握ったこともなかった昔と違いもう二児の母。 坂本の言葉の意味くらいわかる。 そしてそれが許されないことだってわかる。 (でも……) 明日菜は坂本に肩を抱かれ口づけされたときのことを思い出す。 夫がアメリカに旅立って既に1ヶ月。 明日菜は今、寂しい盛りであった。 そしてこのマンションでの人間関係。 若く美しく、そのうえ一番裕福な家庭の妻である明日菜はいわれのないいじめを受けていた。 夫がいるときはそうでもなかったが、夫がしばらくいないとわかるや否やそれは露骨なものになっ ていた。 だからこそ、回覧板を隣の家に渡した帰りに坂本に会ったときにお茶に誘ってしまったのだ。 もちろん明日菜は夫のことを愛している。 しかし、せっかく知り合った坂本とこれっきりというのはなんだか惜しい。 このマンションに住む人以外にいろいろ話す相手が欲しいのだ 「指輪だけ買いますって言えば……」 明日菜は一人つぶやく。 12. ピンポーン 「はい、どちら様ですか?」 インターフォンから明日菜の声が響く。 「坂本です」 「はい……」明日菜が小さい声で返事をする。 ドアが開くのかそれとも……。 坂本は黙ってドアを見つめる。 ガチャリ…… ロックを下ろす音がしてドアが開く。 明日菜が一晩考え下した結論は……ドアを開くことであった。 ドアを開き宝石を購入する。 嫌じゃない。 宝石を購入するのは嫌ではない。 ただそれだけのこと。 明日菜はその裏の現実に目をつぶり決断したのであった。 「坂本さん……」 明日菜は複雑な表情で坂本を中に迎え入れる。 「坂本さん、あの……」 明日菜が坂本に宝石を買うと伝えようとする。 しかし……坂本は問答無用で明日菜を抱きしめ……唇を奪う。 「んん……」明日菜が苦しそうに悲鳴をあげる。 坂本にはわかっているのだ。 明日菜が宝石を買うというのが。 だからこそわざとそれがわからず自分が受け入れてもらえたと誤解した振りをして明日菜の唇を再 び一気に奪ったのだ。 坂本は明日菜に何も考える隙を与えずに何度も何度も唇を奪う。 その行為に……一ヶ月以上夫を留守にしている明日菜の体は奥のほうから熱くなってきてしまう。 昨日、唇を許してしまったのが失敗だった。 あの時、明日菜の中で何かが微妙に狂ってしまったのだ。 明日菜は坂本に抵抗することもできず唇を許しその身を坂本にきつく抱きしめられてしまう。 そして無意識のうちに明日菜も坂本の背に手をまわし自分の体を坂本にこすり付けてしまっている のだった。 13. 「明日菜さん、信じてました」 坂本が明日菜を抱きしめたまま言う。 「……」 明日菜は無言だ。 坂本の目的はもう明らかだ。 明日菜を抱こうとしているのだ。 それなのに明日菜は……坂本を拒否できない。 それどころか久しぶりに自身を包む「男」の感触に明日菜の体が自然にそのときを求めはじめる。 そもそもドアを開けなければ宝石を返さなくてはならないというのは坂本の策略なのだ。 すっかり宝石を気に入ってしまった明日菜に購入をやめるというのは苦渋の選択だ。 さらに昨日何度も唇を奪われてしまった。 一ヶ月もの間、放っておかれた明日菜の肉体に坂本の情熱的な口づけはあまりにも効果的であった。 夫以外に唇を奪われる感覚。 今まで想像したこともなかったその感覚は想像もできないほど甘美なものであった。 どんなに否定しても……明日菜の体は「男」を求めているのだ。 夫ではなく「男」を……。 結局明日菜には……宝石を言い訳にして坂本を受け入れるしか道がなかったのだ。 明日菜がふと我に返ると坂本がブラウスのボタンをはずし始めていることに気がつく。 しかし、明日菜は一つずつボタンがはずされていくのを黙って見守ることしかできない。 そしてすべてのボタンをはずし終えた坂本は明日菜さんのブラウスを脱がせ、そのまま明日菜の乳 房に手を添える。 「こんなところじゃ嫌……」 明日菜がつぶやく。 その言葉はもはや坂本に抱かれることを拒否しているのではない。 場所が嫌だといっているに過ぎないことに明日菜は気づかない。 無意識のうちに明日菜は坂本に抱かれることを受け入れてしまっているのだ。 しかし、明日菜のそのささやかな願いさえ坂本は無視する。 実は坂本はもう自分が抑えられない。 この仕事を始めてから何人かの人妻を抱いてきた。 世間的に見てかなりの美人をものにしたこともある。 しかし……明日菜はその誰とも違うのだ。 ただ美しいだけではなく、庶民とは違う育ちのよさから来る気品がある。 その気品に坂本は思わず無意識のうちにひれふしてしまいそうになる。 しかし、坂本は昨日その明日菜と唇を重ねた。 そして……今明日菜は自らドアを開け自分を受け入れてくれた。 明日菜だってもう大人の女。 あんなことを言った坂本を部屋に入れるとどうなるかはわかっているはずなのだ。 そう、明日菜がどんなに自分とは住む世界が違う高貴な女性であろうと……一旦自分を受け入れた 以上、坂本は明日菜を好きにしていいはずなのだ。 明日菜に……自分を拒否する権利はもはやない。 坂本はそう自分を言い聞かせる。 そして同時にあることを思い出す。 坂本がこの二日間で本能的に気づいたこと。 それは……明日菜は本質的に男に従うタイプの女性であることであった。 14. 「明日菜さん」 坂本は思い切ってズボンとパンツを一緒くたにしてずり下ろす。 明日菜に思わずひれ伏してしまいそうな坂本が選んだ作戦は突拍子もないものであった。 「!?」 明日菜は両手で口元を覆い驚愕する。 まさか坂本がいきなりそんなことをするとは思いもよらなかった明日菜。 しかし、なぜか明日菜はそれから目を逸らすことが出来ない。 初めて見る夫以外のペニス。 それは……夫のものより黒ずみ急な角度で天を衝いている。 (あれに貫かれてしまったら……) 明日菜は思わずごくりと息を呑む。 「明日菜さん」 坂本は驚く明日菜の肩をつかみしゃがませペニスを見せ付ける。 明日菜はもはや手の届かないところにいる高貴な女性ではなく……坂本と同じところまで自ら降り てきた一人の女に過ぎないと坂本は再度自分に言い聞かせる。 「ご主人のとどっちが大きいですか?」 坂本が今まで何人もの人妻にしてきたのと同じ質問を明日菜に尋ねる。 坂本は顔と資産には自信がないがペニスにだけは自信がある。 今まで夫のペニスの方が大きい言った女は一人もいないのだ。 「……」 明日菜は言葉を発することが出来ない。 坂本のペニスに圧倒されてしまっているのだ。 もっというと坂本に貫かれたら自分はどうなってしまうのか、そのことしか考えられない。 明日菜は既に完全に坂本にペースを握られてしまっていた。 「どっちが大きいですか?」 坂本が再度明日菜に尋ねる。 坂本が執拗に尋ねるのには理由がある。 夫のものより大きいと認めてしまうともうその女は終わりなのだ。 その瞬間、完全に坂本のものになってしまう。 「そ、その……」 しかし明日菜は抵抗する。 言った瞬間、すべてが終わってしまうことが明日菜にもわかるからだ。 しかし、夫以外の男に抱かれてみたいという甘美な期待とあまりにも立派な坂本のペニス。 夫しか知らない明日菜がその誘惑を克服するのに夫のいない1ヶ月はあまりにも長すぎた。 15. 結局……明日菜はつぶやく。 「坂本さんの方が……立派です……」 坂本のペニスの目の前で俯いたままつぶやく明日菜。 それはまさに坂本のペニスに絶対服従を誓う姿のようだ。 「明日菜さん、フェラチオしてもらえるともう少し大きくなりますよ」 坂本がいつものように追い討ちをかける。 「フェラチオ……?」 明日菜が思わずその言葉を口にする。 信じられないことだが明日菜はその言葉を知らないのだ。 「そう、フェラチオ。明日菜さんの口でやってもらうともっと大きくなるはずです」 坂本は明日菜に解説する。 (フェラチオって口ですることなのね……) 明日菜が坂本の言葉を理解する。 言葉は知らないが夫のペニスは毎回口にしている。 夫が喜んでくれるため明日菜はフェラチオは結構好きなほうだ。 しかし、それはあくまで相手が愛する夫の場合の話。 一昨日初めて名前を知ったばかりの男のペニスを口に含むなど明日菜にとってありえないこと…… のはずであった。 明日菜の目の前に坂本のペニスがある。 夫のものより大きく黒ずんだペニスを目の前にして興味を持つなというのは無理であった。 明日菜は……黙って坂本のペニスに手を添える。 坂本は黙って明日菜を見守る。 自分から口にさせるのが大事なのだ。 自分からフェラチオをさせることによって明日菜は坂本の女になるのだ。 そして……少し躊躇した後、明日菜は坂本の思惑通り……坂本のペニスを口にしてしまう……。 16. ズチュ…ズチュ…… 明日菜の口元で坂本のペニスが淫らな音を立てる。 「うまいですよ、明日菜さん」 坂本は腰に手を当てた仁王立ちのまま明日菜を褒め称える。 考えてみればなんと傲慢な態度であろうか。 指輪を買ってもらうお客様に坂本は自分への奉仕を強いているのだ。 しかし、明日菜はそのことに気づかない。 明日菜にとって坂本は「指輪を売ってくれる人」なのだ。 「いつもご主人にやってるのと同じように」 坂本は三鷹家の夜の営みにまで介入するかのように明日菜に普段と同じ行為を求める。 「は、はい……」 明日菜は驚くほどあっさりと坂本の言葉に素直に従う。 自分から坂本のペニスを口にした時点でもう明日菜は坂本のものなのだ。 三鷹に教え込まれたすべての性技を坂本のために尽くさなければならない。 明日菜は口をすぼめて坂本のペニスを喉の奥まで飲むこむ。 その間、明日菜の舌は坂本のペニスを下から包み込むような形のまま刺激を与える。 そして明日菜が坂本のペニスを含んだまま頭を前後させると明日菜の唇と舌が坂本に味わったこと のないような快感を与える。 「おおっ……」 坂本は思わず声をあげる。 「ご主人はいつもこんなことをさせてるんですか?」 坂本は明日菜に尋ねる。 明日菜は坂本のものを咥えたままこくりとうなずく。 (へへ……) 坂本は心の中で勝ち誇る。 自分より遥かに豊かで立派な三鷹の妻を自分のものにして奉仕させる下克上の炎。 これだから人妻は止められない。 今回はさすがに無理だと思っていた。 しかし、余りに無防備な明日菜に坂本は自分のものにできると確信を持った。 都合二ヶ月も夫と関係をもてないことを口にしてしまうなどやはり明日菜はまだまだ子供。 そんな隙を見せてしまえば坂本のような男につけこまれてしまうことがわからないのだ。 17. 「ふふふ……」 坂本は不敵に笑うと明日菜の頭をしっかりとつかむ。 そしてまずは自慢のペニスを明日菜の左頬を内側からこすりつける。 「んん……」 坂本に頭をつかまれ逃げようがない明日菜はなすがままに口の中を蹂躙される。 坂本は続いて反対側の頬にも自分のペニスをこすりつける。 坂本は明日菜の口内を完全に蹂躙するつもりなのだ。 そして十分にこすりつけ明日菜の口内の感触を楽しんだ坂本は明日菜からペニスを引き抜く。 「はぁはぁ……」 明日菜は両手を玄関の床につき息を乱す。 坂本はそんな明日菜を見下ろしていたが息が整ってきた明日菜に再びペニスを突きつける。 「!!」 明日菜はまたも坂本がフェラチオを求めていることに気づく。 「もう……やめてください……」 明日菜が坂本に許しを求める。 「ダメです」 坂本はそうつぶやくと今度は無理やり明日菜の口内にペニスをねじ込む。 「んぐっ……」 明日菜は少し涙を浮かべながら坂本のペニスを受け入れる。 「明日菜さん、舌の裏側でおれのちんこの先っぽを擦ってください」 「うう……」 明日菜はいわれるがままに舌の裏側で坂本の亀頭を刺激する。 「こんなとこをご主人に擦りつけたことないでしょ」 坂本がにやりとする。 明日菜はその坂本の言葉に凍りつく。 自分は夫にしたことがないことを……昨日知り合ったばかりの男にしているのだ。 「嫌……」 明日菜はペニスをねじり込まれたまま拒否反応を示す。 まさに坂本にとって予想どうりの反応だ。 坂本はそのまま明日菜を頭ごと股間に押し付ける。 「口をすぼめて」 坂本が明日菜に指示する。 それはもうすでにお願いなどというものではなく……命令という言葉が最もしっくり来る。 坂本は明日菜の顔を見ながら腰を振り明日菜にペニスを打ちつける。 人妻明日菜の嫌がるその顔が坂本の更なる快感を誘う。 18. そして一旦坂本はペニスをゆっくりと明日菜の口から引き抜く。 再び俯き息を乱す明日菜を坂本は無理やり顔を上げさせ再びペニスをしゃぶらせる。 「んぐ……」 苦しそうにする明日菜。 「明日菜さん、おれの先っぽを舌先で刺激して」 坂本は最後の仕上げに入る。 「ご主人にするのと同じようにね」 坂本がにやりと笑う。 明日菜は……観念して坂本の尿道口を舌先で刺激する。 いつも夫がフェラチオの締めに求めてくる時と同じように坂本のペニスに奉仕する。 「いいですよ明日菜さん……」 坂本は美貌の人妻に性技を尽くさせる快感に喘ぎながら明日菜の顔を見る。 ぐりぐりと自分の最も敏感なペニスの割れ目を舌先で刺激する明日菜の淫らな表情にさすがの坂本 も限界を迎える。 そしていよいよという瞬間、坂本は明日菜の頭ごと自分の股間に押し付ける。 ドピュピュッ…… 坂本はため息と共に明日菜の口内に精液をたっぷりと放出する。 (う、嘘……)明日菜は唖然とする。 明日菜にとって初めての経験なのだ。 ……精液を直接口に出されるのは……。 初めての事態に対応できず明日菜の口から坂本の精液が流れ落ちる。 (口に出されたのは初めてか……) 坂本は明日菜の反応を確かめるとまたも無理難題を明日菜に浴びせる。 「こぼしちゃだめです、全部飲んでください」 坂本は明日菜の口から精液が垂れないように顔を上げさせる。 (そ、そんなこと……) 明日菜はさすがに躊躇する。 夫の精液ですら飲み干したことがないのに夫以外の精液を飲み干すことはさすがにできない。 「明日菜さんが初めて飲む精液は三鷹さんのじゃなくておれの奴ってことです」 坂本は自身のペニスの根元を掴み最後の一滴まで明日菜の口に出す。 そんな坂本に明日菜はいやいやをするように顔を横に振る。 「飲まないんでしたら……指輪を持って帰って……今日のことを三鷹さんに言います」 坂本が血も涙もないセリフを明日菜に告げる。 (そ、そんな……) 明日菜は衝撃を受ける。 しかし、今さら自分に何ができるのであろうか。 自分から始めたフェラチオなのだ。 それにいまさら夫にこのことがばれたらと思うとぞっとする。 結局明日菜は……ごっくんと坂本の精液を飲み干す。 そしてその瞬間、自分がもう後戻りできそうもないことに気づく。 19. 「明日菜さん、もの凄くフェラチオが上手です」 坂本がわざとフェラチオという言葉を口にする。 明日菜にフェアチオをしたという事実を改めて認識させ、既に坂本が特別な存在だと思い込ませる ためだ。 「ほら、一回出したのに明日菜さんが上手だからまだおれのちんこが元気満々です」 そういってまたも明日菜にペニスを見せ付ける坂本。 (また口でさせられる……?) 明日菜はもう口でやらされるのは許して欲しいのが本音だ。 もちろん、坂本も上の口にいれるつもりはない。 次は……下の口に決まっている。 「じゃあ明日菜さん」 坂本は明日菜さんを立たせ、玄関のドアに手をつかせ尻を突き出させる。 その体勢に明日菜は坂本の意図に気づき抵抗を示そうとする。 しかし、全ては無駄であった。 坂本が止めるわけがないのだ。 なぜならこれからが本番なのだから……。 坂本は明日菜のスカートのホックを外す。すると明日菜の赤いスカートが床にすっと落ちる。 そしてそのまま……坂本は明日菜の下着をずらし脱がせようとする。 「い、嫌。玄関でなんて……」明日菜が激しく抵抗する。 しかし…… 「ここまで来たら楽しまないと……」 坂本が作業を止めて明日菜の耳元で囁く。 「ご主人には絶対言いませんから……」 「……」 明日菜は思わず黙り込む。 その言葉の裏には逆らうと夫に告げるという意味が言外に含まれているのだ。 明日菜は力なく抵抗を止める。 そしてその瞬間、一瞬にして最後の砦がずり下ろされ……夫にしか開かれていないはずの秘所が坂 本の視界に晒される。 「……」 明日菜は思わず目を瞑り羞恥に耐える。 「行きますよ、明日菜さん」 坂本がペニスを明日菜の秘所にあてがう。 坂本にとって確認するまでもない。 このシチュエーションに濡れない人妻などいるわけないのだから。 20. ズズズッ…… 坂本のペニスが明日菜の秘所にゆっくりと入り込む。 (す、すげええ) 坂本は心の中で喝采をあげる。 初めて経験する明日菜の感触は今まで経験したことがないほど素晴らしい味わいであった。 坂本のペニスに絡みついてくるようなヒダの感触。 ピストン運動をしていても挿す動作と引く動作で快感が異なるのだ。 挿す時は明日菜の秘所を無理やりこじ開けるような感覚で亀頭に耐え難い快感が生まれる。 逆に引くときは坂本のペニス全体に絡み付いてくるような感覚が堪らない。 まるで明日菜本人とは別の意思をもった生き物が坂本のペニスが出て行ってしまうのを惜しんでい るかのようだ。 「あ、明日菜さん!」 坂本は思わず明日菜の名を叫び何も考えずピストン運動を繰り返す。 自分の限界などもはや坂本の脳裏にはない。 今はただ、明日菜の感触を思う存分愉しみ味わいたい。 時には浅く……時には深く……。 緩急をつけて明日菜を責める坂本。 そして坂本のペニスが明日菜の最奥部をノックするたび、明日菜の口から控えめだが艶かしい声が 自然と漏れる。 「ああ……」坂本がペニスを根元まで突き刺す度に明日菜の口から喘ぎ声が漏れる。 ドアを開けた瞬間、いきなり坂本に抱きしめられ何度も何度も唇を奪われた。 ペニスを見せ付けられると自分から口に含み……生まれて初めて男の精液を飲まされた。 そして、ベッドではなく玄関先で、しかも外とはドア一枚を隔てただけの場所で坂本に後ろからの 挿入を許す。 明日菜は……完全に坂本に征服されていた。 しかしそれは自ら選んだ道であった。 今日、ドアを開けたのは明日菜。 坂本に口づけされているときに思わず坂本の背に手をまわししがみついたのも明日菜。 ブラウスを脱がされるとき、何一つ抵抗しなかったのも明日菜。 そして……坂本のペニスを口にしたのも……明日菜自らであった。 21. パンパンと男女の肌がぶつかり合う音が玄関先に響く。 坂本がペニスを奥深くに突き挿すたび、貫かれる快感が明日菜の背を伝い脳天まで走り抜ける。 そしてペニスが明日菜の最奥部に達するたび、更なる快感が明日菜を襲い人様に聞かせられない声 をあげてしまう。 しかし快感はそれだけではない。逆に坂本がペニスを引くたび、坂本のカリの段差部分が明日菜の 中に引っかかり別の耐え難い快感をもたらす。 実際のところ、最初に挿入された瞬間、明日菜は意識を飛ばしてしまった。 夫である三鷹とのセックスでもそんなことはなかった。 しかし、だからといってそれで終わりというわけではない。 ぼんやりしてしまった明日菜の意識は次々と襲い来る更なる快感で現実に引き戻される。 三鷹と明日菜の愛の巣の玄関で……明日菜は夫ではなく二日前に名前を知ったばかりの坂本の責め を受ける。 それはまさに明日菜が今まで経験したことのない、許されるはずのない愚行であった。 由緒ある家柄に生まれた明日菜は何不自由なく育てられた。 子供の頃から絵に書いたようなよくできた子で親の手を煩わせたこともない。 成績は小学生の頃からクラスでトップクラス。なんの挫折も無く中学、高校と進学し、お嬢様大学 を卒業した。 そしてお見合いで知り合った三鷹と結婚し、すぐに双子を出産。 料理も得意で家事もそつなくこなす非の打ち所のない娘であり妻であった その明日菜が……三流大学出身でペニスだけが自慢の坂本にいいように責められている。 結果として夫の留守に坂本の求めるままに体を許してしまった明日菜。 許されるはずのない不貞行為だ。 しかし……だからこそ明日菜は体の奥底から燃え上がる。 脳裏を焼く夫を裏切っているという罪悪感。 それが激しいスパイスとなり快感を数倍に膨らませ明日菜を追い詰める。 22. 坂本は明日菜の腰をしっかりと掴みピストン運動を続ける。 今まで抱いてきた女達とは全く違う張りのある白い素肌と美しい体のライン。 腰のくびれなど坂本は頬ずりしてしまいたくなるほどにセクシーだ。 そして既に子供を二人も生んだとは思えないほどに自分を締め付けてくる秘所。 「どうですか、明日菜さん」 坂本が全く余裕のない口調で明日菜に尋ねる。 なにか口にしていないとあっという間に暴発してしまいそうなのだ。 「も……もっ……と……」 明日菜は思わず更なる快楽を求めるセリフを口にする。 明日菜は普段男を求めるようなセリフを口にすることはない。 夫の優しい愛撫に高められ、溢れるような愛情の中、達することがほとんどだ。 三鷹は夫であると同時に明日菜の人生における先生のような存在なのだ。 口づけも三鷹が初めて。 フェラチオも三鷹が初めて。 セックスも三鷹が初めて。 もちろん三鷹以外と肉体関係をもったことは一度もない。 明日菜は性にまつわるあらゆることを三鷹に教わってきた。 三鷹もうぶな明日菜をまるで源氏物語の光源氏が若紫を育てるように自分好みの女に育て上げた。 明日菜にとってセックスとは三鷹と心を通わせることとほぼ同義であった。 だからこそ三鷹にフェラチオすることは苦痛でないし、夫が喜んでくれると自分まで嬉しくなって しまう。 しかし……坂本は違う。 坂本はただ快感のみを求め、女を屈服させる。 そして明日菜は坂本の思惑通り屈服させられる。 明日菜は夫と全く違う坂本とのセックスに成す術もなく何度も何度も意識を飛ばされてしまう。 23. 度重なる絶頂感に明日菜は思わずひざをつく。 もう立っていることも辛いのだ。 「楽に……して……」 明日菜はうわごとのようにつぶやく。 そんな明日菜の姿に坂本はいつものように中出しを決意する。 イく瞬間の女性はあまりに無防備だ。 そこにつけこんで坂本は中出しする。 中出しされた瞬間の人妻の戸惑う表情が坂本にはたまらないのだ。 中には激怒する人妻もいる。 しかし覆水盆に帰らず。 中出し後に何を言っても文字通り後の祭り。 適当に言い訳すればいいだけなのだ。 坂本はペニスを明日菜の最奥部まで突き刺した状態で腰を左右に振る。 今までの反応から坂本は明日菜の弱点は最も奥の部分であることに気づいていた。 そこを重点的に擦りつけ明日菜を一気に絶頂まで導こうというわけだ。 そしてそれはまさに大正解であった。 そこは三鷹のペニスでは届かない位置で初めてもたらされる快感に明日菜は全身を震わせて身悶 える。 「だ、だめ……」 明日菜はあまりの快感に拒否反応を示す。 しかし構わず坂本はペニスを擦りつけ続ける。 それは同時に坂本にとっても賭けであった。 最も敏感な尿道口をこすりつけるという行為はある意味自爆行為でもあった。 ただでさえ明日菜の甘美な感触に坂本も追い詰められているのだ。 しかし、結果として坂本は明日菜に勝利する。 「……ああ……っっ!!」 明日菜の体が振るえ崩れ落ちそうになるのを坂本はなんとか支えそのまま耐えに耐えたペニスを開 放し精液を明日菜の中に流しこむ! 24. ビュビュビュッ…… 我慢に我慢を重ねた坂本の精液が堰を切ったように明日菜の中に流れ込む。 その感触に明日菜は思わず我に返り手足をじたばたして逃げようとする。 ……しかしそれは無駄であった。 坂本にとってそれは予想通りの反応に過ぎないのだ。 坂本は明日菜が逃げれないように腰をしっかり掴む腕に力を込める。 手足に力が入らない明日菜は自分の子宮に坂本の精液を流し込まれる熱い感覚に呆然とする。 確かに自分は夫を裏切った。 しかし、まさか坂本が自分に中出しするとは思わなかった。 明日菜は心のどこかで最後には抜いてくれると信じていた。 しかしそれは明日菜の甘い願望に過ぎなかった。 坂本は容赦なく明日菜に中出しする。 明日菜はもう坂本のものなのだから坂本にとっては当然の行為に過ぎない。 (ごめんなさい、あなた……。わたしが間違っていました……) 明日菜は心の中がで三鷹に謝る。 しかしそれは結果として何の意味も成さない。 坂本に抱かれた時点で明日菜は完全に三鷹を裏切っているのだから。 中出しはその結果に過ぎない。 「明日菜さん、ベッドに行きましょうか」 坂本はたっぷりと中出ししたばかりの美しい人妻に囁きかける。 呆然とした表情の明日菜に坂本は心の底から満足する。 明日菜のこの表情が見たかったのだ。 「じゃあ行きましょう」 そういって明日菜を抱き上げ部屋の奥に歩き始める坂本。 (これで休ませてもらえる……) 明日菜は坂本の言葉に思わず一安心する。 しかし、それは大いなる誤りであった。 坂本の言葉は三鷹夫婦の愛の営みが行われる場所、つまりベッドに場所を変えての第二ラウンド開 始の宣言に過ぎなかったのだから……。