A11 初夜 (前編) 1. 五代と響子、二人の結婚式の二次会が終わり、みなは茶々丸から一刻館に戻ってきた。 「あんたたちホテルに部屋とってあるんだっけ?」 一の瀬が二人に尋ねる。 「新婚旅行は午後からだし一刻館(うち)に泊まって行こうと思うんです」 と響子。 「ではしみじみ飲みましょうかね」 四谷がしみじみとつぶやく。 「いーんじゃない」 朱美もまんざらでもなさそうにつぶやく。 「まだ飲むんですか……」 そんないつも通りのやりとりに愛想笑いを浮かべながらも呆れてしまう響子。 「そーと決まったらつっ立ってないで。管理人さんも五代君も早く!」 朱美が二人をせかす。 「あーもう着慣れないもんきてると肩がこってしかたないねえ」 そうつぶやく一の瀬の心は早くも宴会へと心が飛んでいる。 いつものように二人の意思とは関係ないところで宴会が決まり、二人は顔を見合わせる。 「仕方ないわ、いきましょ」 響子が五代に微笑みかけると五代も無言でうなずく。 「じゃあ5号室に集合っ!」 上機嫌な朱美が音頭を取る。 「ああ、五代君たちは疲れてるだろうから一息ついてからで」 一の瀬が珍しく二人を気遣ってみせる。 「はいはい、わかりました」 響子が笑顔でこたえる。 「ただいまー」 「ただいまっ」 「ただいま……」 みなは一刻館の玄関をくぐりそれぞれ部屋に戻っていく。 2. 「お疲れ様でした」 玄関に腰掛けて靴を脱ぐ五代に響子が優しく声を掛ける。 「響子さんこそ疲れたでしょう」 「まぁ……。でも昨日も遅かった五代さんに比べたらましですわ」 響子が五代を少し心配そうに見つめる。 一刻館の住人達は、昨日も夜更けまで宴会という名の嫌がらせを行い、五代は仮眠程度の睡眠時間しか取れていない。 「慣れてますから」 五代は大丈夫とこたえるかわりに響子の背中を優しくポンと押し、二人の住まいである管理人室に導く。 そう、五代は疲れたなどといってられない。 なにしろ五代にはまだまだやるべきことがあるのだから……。 カチャリ…… 響子がドアを開け部屋に入ると五代も続いて部屋に入る。 そしておもむろに響子の顎の下辺りで両手を交差させるようにして後ろから抱きつく。 「えっ……?」 響子はいきなり抱きつかれ動転する。 「今日の響子さん……ほんとに綺麗でした……」 五代が響子の耳元で囁く。 「いやだわ、五代さん……」 響子は状況に戸惑いつつも少し照れて見せる。 綺麗と言われるともちろん嬉しいのだがなんだかくすぐったい。 「ねぇ、響子さん」 五代が響子に抱きついたまま話しかける。 「そろそろ五代さんってのは……やめませんか……?」 五代はここ数日考えていたことを響子に伝える。 「そう……ですね……」 響子も五代に応じる。 響子もそのことはずっと意識していた。 結婚式を終えたのに五代さんではやはりなんだかよそよそしい気がする。 「なんて呼びましょうか?」 響子は五代の腕に手をそっと添えて尋ねる。 「響子さんが呼びやすい呼び方で……」 「それでしたら五代さんが一番呼びやすいですわ」 響子がくすくすと笑う。 「それじゃあ今までどおりじゃないですか」 五代もつられて笑う。 「とりあえず着替えましょうか」 響子は笑いながら五代を振り払おうとする。 しかし、予想以上に五代の腕には力が込められており振り払うことが出来ない。 「五代さん……?」 「……さっきもいいましたけど……今日の響子さんは本当に綺麗でした……」 五代がそういって披露宴の響子の姿を思い出しため息をつく。 「そ、そんなことありません……」 響子は頬を赤く染め否定する。 しかしそんな響子の言葉はもう五代の耳に入っていない。 「披露宴でのあのドレス姿を見ておれ……」 五代はそうつぶやくと響子を反転させ向かい合わせになる。 「こんな綺麗な人がおれの奥さんなんだって思ったら、もうなんだか我慢できなくなっちゃって……」 五代が響子の背中に回している腕に力を込めると響子はあっさりと五代の胸に体ごと押し付けられてしまう。 3. 「あの……みんなが待ってます……」 響子は五代がいつの間にかすっかり興奮してしまっていることに気づき正気に戻ってもらおうとつぶやく。 「少しくらい待たせちゃっても構いませんよ」 五代はそう言うと響子と唇を重ねようとする。 響子は軽く拒否する姿勢を見せるが結局五代に唇を重ねられてしまう。 (思った通りだ) 五代は心の中でつぶやく。 昔はわからなかったが響子は明らかにスキンシップに弱い。 こうやって唇を重ねていると心の距離があっという間に縮まっていく。 五代は響子の体から力が抜けていくのを確認すると、一旦唇を離し響子の表情を観察する。 見たところ恥ずかしそうな表情ではあるが嫌がる素振りもない。 五代は再度唇を重ねるとゆっくりと響子の口内に舌を侵入させ始める。 (そ、そんな……) 響子は驚く。 五代が普通の口づけではなく舌を絡ませてくるのは響子を抱くときだけなのだ。 響子は五代の意思を感じ取り体を離そうとするが五代は響子の体をがっちり押さえて離さない。 普段はセックスなんて知らないとでも言いたげな優しく家庭的な雰囲気を持つ響子。 しかし実際は違う。 約半年に渡って五代に抱かれ続けたその女盛りの肉体は文字通り女の体になってしまっている。 その証拠に響子の体の奥底に潜む女が今まさに疼きはじめている。 体の奥から湧いて来る衝動をじっと我慢し五代の舌を拒む響子。 そんな響子の反応に五代はワンピースの上から豊満な乳房をなぞってみる。 「あっ……」 響子は思わず声をあげる。 しかし、それこそ五代の待ち望んだ反応であった。 響子が声をあげたその瞬間、五代は舌をまんまと進入させる。 響子は五代の舌が自身のそれに絡み付いてくる感触に思わず体を震わせる。 まさか夫である五代の舌を噛む訳にはいかず仕方なく五代を受け入れる。 響子を包み込む五代の荒い息遣いと男の匂い。 絡みついてくる五代の舌。 ディープな口づけに響子の胸は激しく高鳴りはじめる。 気がつくと響子は立ったまま五代とお互いの舌を貪りあってしまっていた。 そして同時に響子は気づく。 五代がすっかり元気になりつつある下半身の膨張をスカートの上からこすり付けてくることに。 結婚式の夜。 二人しかいない管理人室。 衣服を介しているとはいえ夫との性器の接触。 我慢しがたいほどに体の奥底から湧き上がってくる下半身の疼き。 その全ての条件に響子は思わず流されてしまいそうになる。 4. 「響子さん……」 五代が唇を離し響子を見つめてつぶやく。 その瞳は明らかに普段とは違う。 本能のままに響子を組み敷くことしか考えていないのだ。 ……五代の脳裏に残る披露宴での響子の姿。 普段あまりしない化粧をほどこし、淡いピンクのドレスに身を包んだ響子はこの世のものとは思えない程に美しかった。 そして美しいだけではなかった。 いや、美しいだけなら良かった。 ドレスを盛り上げ存在を主張する胸のふくらみ。 ぴったりと体にフィットし、両の肩と背中を露出したドレス。 そのドレスは五代しか知らないはずの染み一つない響子の美しい体の一部とそのラインを披露宴に参加した皆に教えてしまっていた。 五代には披露宴に参加したほとんどの男が響子を見て淫らな想像をしていたことがわかる。 坂本の頭の中で……賢太郎の頭の中で……そしておそらくは五代の父の頭の中でも響子はあの美しいドレス姿のまま淫らな姿を演じさせられたはずだ。 それは仕方のないことだと五代にもわかっている。 男なら誰しもそんな妄想をしてしまうほどに響子は美しかった。 実際、五代ですらつい淫らな妄想をしてしまったほどなのだ。 しかし、たとえ想像の中だとしても響子が人のものになるのは耐え難い。 昔から響子で妄想し、オナペットにしてきた五代がいうのも説得力がない話だがこればかりは仕方がない。 他人の妄想を止めることが出来ないのであれば……子供じみた発想ではあるが実際に響子を抱くしかないと五代は思う。 妄想ではなく実際に響子を抱けるのは五代だけなのだ。 披露宴の途中、隣に座る響子を見ながら五代はそんなことばかり考えていた。 しかし披露宴を終え茶々丸での二次会が始まるとそんなことは忘れつつあった。 長い付き合いの皆との楽しいひと時はそのことを忘れさせるのに十分であった。 ……帰り際に長年の友人である坂本と小林の言葉を聞くまでは……。 「五代、おれ初めて管理人さんを見たけどすげえ美人だな。おれ、披露宴の間中、変なことばっかり考えてたよ」 「ばっか、小林。なに言ってんだよ。おれなんか我慢できずにトイレで一発抜いちゃったよ」 その時、五代は苦笑するしかなかった。 まさか本当に坂本がトイレで抜いたとは思わないが、二人とも響子をそのような目で見ていたのだ。 五代の中に生まれる苦い感覚。 確かに響子は自分には分不相応に美しい。 しかし分相応であることがわかっているがゆえに誰にも渡したくない。 茶々丸からの帰り道、五代はもう響子を抱くことしか考えていなかった。 5. 「だ、だめですっ」 響子の言葉に五代は我に返る。 「どうして……ですか?」 五代は思わぬ拒絶に顔をしかめる。 「だからその……みんなが待ってるじゃないですか」 「それは……」 「……そんなにあわてなくてもいいじゃないですか」 響子が五代を言い聞かせるように言う。 「……」 「これからは……ずっと二人きりなんですし……」 響子が少し顔を赤らめて言う。 「でも……」 「だめなものはだめです!」 響子が普段の口調に戻り五代を拒絶する。 しかし五代も負けてはいない。 かつては響子のいいなりであった五代だが今は違う。 自分が響子に惚れているのと同じように響子が自分に惚れていることはわかっている。 そしてそれはこれまでとはあまりにも大きな違いだ。 五代は響子のお尻に両手を回し自分の股間に響子の股間を押し付けながらつぶやく。 「そうは言っても……おれ、もう我慢できません」 五代の口調は穏やかだが有無を言わせぬ雰囲気がある。 (この人、本気だわ……) 響子は五代が自分の言葉を無視してまで求めてくる様子にもはやなにを言っても無駄なことを悟る。 なによりここまであからさまに性器を押し付けられてしまっては響子自身、意識してしまうのは当然であった。 「五代さんの気持ちはわかりました……」 響子がつぶやく。 「でもね、こんな慌しいのはいや」 そう言って響子が五代を見る。 「だって……今夜はあたし達にとって特別な夜じゃないですか」 「響子さん……」 「だから、みなさんとの宴会が終わってからにしてください……」 確かに響子が言うことはもっともだ。 いわゆる初夜を慌てて終わらせてしまうというのも味気ない話だ。 かといってそれではすっかりその気になってしまった五代の熱の行き場がない。 どうしていいかわからず五代は一人身悶える。 「とりあえず5号室に行ってください。あたしは疲れたからもう休んだって言えばみなさん、なにもいいませんわ」 「……」 「それで宴会が始まってしばらくしてから明日もあるからって抜けて来れば……ね?」 響子がにこりと微笑みかける。 五代もそれがいいかもしれないと思い始める。なにより住人達の動向を気にせず響子をじっくりと抱けるのがいい。 「わかりました、響子さん」 五代は元気にうなずいてみせる。 「急いで着替えて行ってきます」 五代は気分を切り替えスーツを脱ぎ部屋着に着替え始める。 6. 「じゃあ、行ってきますね」 着替えを終えた五代が響子に告げる。 「ええ……」 「1時間くらいで戻ってきますんで待っててください」 そう言って五代がドアに手を掛ける。 「あ、あの……」 響子は部屋を出て行こうとする五代に呼びかける。 「なんですか?」 「あの……」 響子が少し恥ずかしそうな素振りを見せる。 「どうしたんです?」 五代が響子の目の前まで戻ってきて尋ねる。 「その……早く……戻ってきてくださいね……」 響子がうつむいたまま小さな声で五代につぶやく。 自ら提案したこととはいえたった一人で五代の帰りを待つのは少々寂しい。 結婚式の夜なのだからそれはなおさらだ。 「響子さん……」 五代は響子の肩に手を乗せる。 「すぐ……戻りますから」 そういって五代はうつむいたままの響子を安心させるように微笑む。 「約束よ」 響子は顔を上げ少し笑顔になって五代に微笑む。 「ええ、約束です」 五代が響子を優しく抱きしめながら言う。 「それじゃ……」 そう言って五代が響子から体を離しドアを開ける。 「またあとで……」 五代は最後にそう告げると管理人室を後にする。 響子はなんとも言えない表情で目の前のドアが閉まる光景を見つめるのであった。 7. そして時は流れ午前0時すぎ。 いつものように住人達にからかわれ続けた五代がやっとの思いで宴会を抜け出したとき、こんな時間になってしまっていた。 「響子さん、響子さん」 やっと響子に会えると五代は喜び弾んでコンコンとドアをノックする。 しかしドアからは返事がない。 (眠っちゃったのかな) ポケットから鍵を出そうとした瞬間、ドアが静かに開く。 五代がそれに気づき顔をあげると……最近すっかりご無沙汰の響子の怒りの表情が目に入る。 (やばい、怒ってる……) 五代は思わず後ずさる。 「ウソつき……」 響子が眼をつりあがらせてつぶやく。 「すぐに戻るって約束したじゃないですかっ!」 「い、いや……」 響子の剣幕に五代がたじろぐ。 1時間で戻るといっておきながら3時間近くたってしまっているのだから響子が怒るのはあまりにも当然な成り行きであった。 「宴会くらいすぐに切り上げればいいじゃないですか!」 「それができるんなら浪人時代からそうしています」 五代がなんとか必死に言い返す。 「ふーん……」 予想外の抵抗に響子が五代を見上げる。 「あたしのことなんてどーでもいいんでしょ」 かちんときた響子は五代に背を向け恨み言を言う。 「ま、まさか……」 「あとで言いくるめればいいって思ってんでしょ?」 「なにわけわかんないことを……」 五代はつい数時間前とは全く違う響子の豹変に言葉を失う。 「響子さん、機嫌直してくださいよ」 五代が響子の両肩に手を添えて頼む。 「ダメです。甘えないでっ」 響子は取り付く島もなく五代の手を振り払う。 しかし、五代も今さら5号室にもどるわけにはいかない。 それに今の五代にはわかる。 目の前に見える響子の背中が自分を求めていることくらいわからないはずがない。 「でも……待っててくれたんですよね」 五代は再度後ろから響子の肩に手を置き響子の耳元で囁く。 「……」 響子は五代に体を触れられた瞬間ビクっとするが返事はない。 五代はそのまま響子のお腹の辺りに手をまわして後ろから響子を抱きしめる形になる。 「おれ……響子さんが待っててくれたのがすごく嬉しいです」 五代は響子の体の温かさを感じながら言葉を投げかける。 ふと気がつくと部屋の片付けでもしていたのか響子は二次会の時のワンピースからいつもの部屋着にもどっている。 紺のスカートに赤い春物のセーター。首からは黄色いシャツの襟が覗き、豊かな黒髪はいつもの赤いリボンで結ばれている。 「おれ、逆に嬉しいんです、こんな風に響子さんに怒ってもらえて」 「えっ……?」 初めて響子が五代の言葉に反応を示す。 「おれと一緒にいたいって思ってくれてたからこんなに怒ってるんですよね」 「……」 相変わらず響子の返事はない。しかし五代は一人言葉を続ける。 8. 「ねえ、響子さん。おれはやっぱり響子さんの怒った顔より笑顔を見ていたいです」 「……」 「だからもう……機嫌を直してもらえませんか?」 五代は響子の反応を待つ。 響子はそれでも言葉を発しない。というより何をどう言えばいいのかわからない。 響子だって五代と喧嘩をしたいわけではない。 だからといってすぐに五代と仲直りできるような素直な性格ではない。 しばらくして響子がぽつりとつぶやく。 「……とりあえず部屋に入りましょ」 「きょ、響子さん!」 五代が笑顔で嬉しそうに響子の名を呼ぶ。 とりあえずの妥協点として部屋に戻ることを提案した響子。 しかし五代の嬉しそうな声を聞くと自分まで嬉しくなってしまうことに響子は少し驚くと同時にため息をつく。 「いつからかしら……」 響子はぽつりとつぶやく。 「えっ……?」 響子は言葉を続けないため響子が何を言おうとしたのか、五代にはわからない。 ただ、決して自分にとって都合の悪い言葉を言おうとしたことではないことは雰囲気からわかる。 「響子さん、こっちをむいてください……」 五代の言葉になんとなく振り向く響子。 すると五代は響子の両肩を掴み響子をじっと見つめる。 (えっ、なに……?) 響子は一瞬わけが分からない。 しかし、なんだか恥ずかしくてつい目を逸らしてしまう。 (いい感じだな……) 五代は響子から自分を拒否する空気が消えたことに気づくとそのまま響子を抱きしめようとする。 すると…… 「待って!」 響子が突如五代をつきはなす。 せっかくいい感じだったのにどうしたことかと五代が響子を見やると響子が自分の後方を見ていることに気づく。 響子の視線を追い、後ろを振り向くとそこには……とんでもないものが視界に入る。 9. 「ちっ、惜しい……」 四谷が思わず舌打ちする。 「初々しい夫婦喧嘩だったねえ〜」 一の瀬が楽しくてたまらないといった表情でつぶやく。 「ちぇっ、もう少しでキスシーンが見れたかもしれないのに」 賢太郎は残念そうだ。 「実は僕、二人の熱いキスを見たことあるんですよ」 二階堂が自慢げにつぶやく。 「ほんとに?」 朱美が驚いた表情で二階堂を見る。 「なにやってるんですか!」 五代がそんな住人達に思わず大声を上げてどなる。 「なにって……ねえ〜」 一の瀬がガハハと笑うと皆が笑いに包まれる。 スタスタと歩く音に気づき振り向くと響子が部屋に入りドアをばたんと閉める姿が目に入る。 「響子さん……」 五代が思わずつぶやく。 「逃げた」 朱美がつぶやく。 「あんたらが覗きなんてするからでしょうが!!」 五代が皆を責める。 「わかったわかった、あたしらもう2階にあがるからあとは仲良くやんな」 一の瀬が背中を向けて手を振りながら立ち去っていく。 「五代く〜ん、がんばってね〜」 朱美がにやりと笑うと二階堂もにやにやしだす。 賢太郎はちょっと恥ずかしそうに五代と管理人室のドアを交互に見、五代の視線に気づくとあわてて階段に向かい歩き始める。 皆が立ち去った廊下で五代は管理人室のドアを見つめたままため息をつくのであった。 10. 五代は管理人室のドアを開け部屋に入る。 「響子さん」 五代は響子の姿を認めるととりあえず響子の名前を呼んでみる。 「なんですか?」 響子が五代にこたえる。 「あの……怒ってますか?」 響子は諦めたような表情で五代を見る。 「まあ……あの人たちのことですから……」 響子が仕方ないといった表情でため息をつく。 「あの……遅くなってしまって……。ほんとはもっと早く戻りたかったんですけど」 五代が少し言い訳する。 「あの人たちに無理やり引き止められたんですよね」 響子はその様子を頭に描きながら尋ねる。 「まあ……。おれがもっとはっきり断れればいいんですけど」 五代は自分の押しが弱いところを少し悔やむ。 「考えてみれば仕方ないんですよね。五代さんは五代さんなんですもん」 響子が少し微笑して言う。 響子はそのまま全身が映る鏡の前に座り、髪を結ぶリボンをほどきはじめる。 「響子さん……」 五代はそんな響子をゆっくりと抱きしめる。 若干の堅さはあるものの響子も五代に身を委ねる。 「日付は変わっちゃいましたけど……今夜が特別な夜だってことに変わりはありませんから」 五代が使い慣れない甘い言葉を囁く。 普段あまり使わないからこそ、いざそんな言葉を使われてしまうと響子は一気に意識してしまう。 「宴会が終わったらって約束でしたよね」 五代は目の端で既に布団が敷かれていることを確認して尋ねる。 「ええ……」 響子は素直にうなずく。 「響子さん……」 五代は熱いまなざしで響子の瞳を覗き込む。 響子も覚悟を決めて五代の瞳を見つめ返す。 そんな響子の様子に五代はゆっくりと唇を重ねる。 響子も何の抵抗も見せず素直に五代を受け入れる。 「響子さん……」 唇を離し五代がつぶやく。 響子は少し目を逸らしたまま素直にうなずく。 五代は響子がうなずいたのを確認するとセーターを掴み脱がせ始める。 響子も子供のように万歳して脱ぐのに協力する。 ボタンを全てはずしシャツを脱がせると、響子の上半身を隠すのはピンクのブラのみになる。 「立って……」 五代の言葉に響子が立ち上がるとあっという間にスカートが床に落下する。 「あの、明かりを……」 「いいじゃないですか」 「で、でも……」 ごねる響子の言葉を遮って五代は言葉を続ける。 「そんなことより……おれも脱がせてください」 「あ、あたしが……ですか……?」 響子は少し当惑して五代に尋ねる。 「ええ、響子さんがおれを脱がしてください」 五代が響子に頼む。 11. 「構いませんけど……」 響子は言われるままに五代の服を脱がし始める。 トレーナーとシャツを脱がせると五代の厚い胸があらわになる。 既に見慣れた夫の肉体とはいえ明るい部屋で目の前にすると響子はなんだか恥ずかしい。 「下も……」 五代は響子の恥ずかしがる様子を楽しみながら続きを促す。 「はい……」 響子はそういって五代の前に跪き五代のベルトに手を掛ける。 そのままズボンをずらすと五代はトランクス一枚になる。 するとトランクスの一部が明らかに盛り上がっていることに嫌でも気づかされる。 「……」 響子は思わず黙り込む。 ここに来て響子はやっと五代の意図に気づく。 五代の前にしゃがみこんだこの体勢は明らかに響子にフェラチオを意識させる。 最後の一枚を脱がしてしまっては五代のものを口にせざるを得ない気がする。 響子の理性は自ら口にするのを拒否しようとする。 しかし、体の奥底からそれとは正反対の感情が湧き上がってくる。 そう、響子には五代のものを口にしたいという感情がある。 もちろん単純に五代に喜んでもらいたいという気持ちもある。 響子が口でする度に五代ははっきりと悦びの言葉を口にする。 口でするのは恥ずかしいが、やはり喜んでもらえると響子自身も嬉しい。 それにかつてと比べると口ですることにそれほど抵抗はない。 つまり今響子を苦しめている感情はそんな単純なものではない。 だからこそ響子は苦しみ固まってしまう。 「下も……脱がせてください」 五代は動きが止まってしまった響子を見守る。 五代は響子自らの手で脱がせてもらい口にさせたいのだ。 響子は上目遣いで五代に許しを乞う。 しかし五代は響子を見つめ返すだけで何も言わない。 そんな五代の態度に響子は諦めて五代の指示に従う。 躊躇しながらもゆっくりと五代のトランクスをずり下ろすと当然のごとく五代のものが響子の目の前であらわになる。 12. 「きょ、響子さん……」 五代が少し恥ずかしそうに照れる。 妻とはいえ女性の目の前に自身のまだ中途半端にしか勃起していない性器を晒すことはさすがに恥ずかしい。 響子もどうすればいいか分からずただ五代のものをじっと見つめる。 響子が思ったよりはまだそれほど大きくなっていない。 しかしそれは一瞬のことであった。 響子の目の前で五代のものが少しづつ鎌首をもたげ天を衝く角度になる。 「えっ……」 響子は目の前でそそり立つ五代のものを呆れるようにして見つめる。 「響子さんに見られてると思うと……」 五代が照れながら言う。 響子に口でしてもらう期待で五代のものは一気に戦闘体勢に入ってしまったのだ。 「あの……どうしてもしないといけませんか……?」 響子がうつむいたままつぶやく。 「なにをですか?」 五代が少し意地悪して響子に尋ねる。 響子はその言葉に思わずはっとする。 (やだ、あたしったら……) 響子は一人赤面する。 五代は響子が一人相撲する様子を楽しむ。 好きな子をいじめるのと同じで響子が恥じ入る様子を見たかっただけなのだ。 そして五代が響子に布団の方に行こうと告げようとした瞬間、響子が先に口を開く。 「仕方ないわね……」 響子はうつむいたままそうつぶやくと五代のものに手を添える。 「無理に今すぐじゃなくても……」 「今すぐして欲しいんでしょ?」 「そ、それはそうですけど……響子さんはいやなんじゃ……?」 五代の言葉に響子がぴくりと反応する。 「あたしはいやだけどあなたは好きなんでしょ?」 「そ、それはそうですけど……」 五代の言葉に響子はゆっくりと五代自身の竿の部分を右手で上下に擦り上げる。 「うっ……」 その刺激に五代が少し声をあげると同時にその大きさと硬さがより一層顕著になる。 「口で……して欲しい……?」 響子が五代に尋ねる。 「え、ええ……」 五代の言葉を耳にした響子は先端から少しづつ五代のものを口に含むんでゆく……。 「おお……」 五代は思わずため息をつく。 披露宴で他の男達の視線を釘付けにした響子が、今まさに自分のものを口にしているのだ。 五代の男を包み込む響子の口の生温かい感触を感じているうちに他の男達へのすさまじいまでの優越感がこみ上げてくる。 この美しい響子の夫は間違いなく自分なのだ。 「んぐ……」 喘ぎ声をあげながらしゃぶる響子を五代はじっくりと見つめる。 五代から言わなくても自らフェラチオをするようになった響子。 付き合い始めた頃はそんなことをするはずもなかった。 そもそもフェラチオは女性からの一方的な奉仕だ。 フェラチオを嫌いなはずの響子が自ら進んでそれを行うということの意味。 五代はあらためて響子が自分の妻であることに心から感動する。 13. 「ふう……」 一旦、口を離した響子が息を吐き出す。 響子は少し前まで口でするのがいやでいやで仕方なかった。 初めて五代に抱かれた夜、理由があるにせよ口でしてしまったことを心から後悔していた時期もあった。 そもそも響子は男性器を口で愛撫するなど想像したこともなかった。 せいぜい女性週刊誌のエッチな特集で得た程度の知識しかなかったのだから当然だ。 だが響子の意に反し、五代は執拗に求めてきた。 響子も毎回は断ることができず、結局は五代に求められる度に口にするようになってしまった。 そして五代は大抵の場合、響子に飲み干すことを強いる。 そのようなことを強要されるのは普段の五代からは想像できないことであった。 普段と違う五代に響子はなぜか拒否できず心の中で反発しながらも我慢してきた。 五代が望むのなら、と響子は無理やり自分を抑えてきた。 しかし今、響子は自分がよくわからなくなってきている。 抵抗がないといえば嘘になる。 しかし五代が喜んでくれることがなによりも嬉しい。 さらに響子の中でこみ上げる先日のホテルで初めて自覚したもう一つの感情……。 響子にとってフェラチオは五代を興奮させるためだけのものではない。 響子自身をも激しく昂ぶらせるのだ。 もちろん理性ではおかしいことはわかっている。 五代に口を陵辱されることに淫らな喜びを感じてしまうなんて認めることはできない。 しかし、先日ホテルで久しぶりに口でさせられ、口内をいたぶられた後、響子はかつてないほどに昂ぶってしまっていた。 そして五代に貫かれた瞬間、信じられないくらいあっさりと絶頂を迎えてしまった。 あの快感を……響子は忘れることができない。 あのためならもっと積極的にしてもいいとさえ思えてくる。 しかし実際には響子は五代に普通に愛してもらうだけで十二分に満足できる。 だからこそ普段の自分とは全く違う淫らな自分をさらけ出されてしまうフェラチオに抵抗があるのだ。 「響子さん……」 五代に名前を呼ばれて響子は我に返る。 五代のものを掴んだまま顔を上げる響子。 「あの、時間も遅いんで……」 五代が遠慮がちに言う。 響子はこくりと頷くと再び五代のものを口にする。 ずちゅずちゅと五代のものと響子の唾液がいやらしい音を立てる。 今までどおりの響子のフェラチオ。 まもなく五代は満足して達する、響子はそう思っていた。 響子が異変に気づくのにさほど時間は必要でなかった。 今までならすぐにうめきだすはずの五代が平然とした顔で響子を見下ろしているのだ。 (こ、こんなはずじゃ……。この間のホテルでもあっさりと……) 響子は動揺を悟られまいと五代の亀頭を舌で包み込むように舐める。 「おお……いいですよ響子さん……」 五代が余裕を持って響子に声をかける。 響子はそんな五代の言葉が耳に入らないかのように必死に口で愛撫する。 その懸命な愛撫に五代は思わず精液を放出してしまいそうになる。 当然だ。 愛する妻に必死に奉仕されて感動しない夫などいるわけがない。 しかし五代は耐える。 余裕の表情を無理やり作り出し必死に奉仕する響子を見下ろす。 14. そのまま数分の時間がたった。 響子は懸命に奉仕を続けるが結局五代を満足させることが出来なかった。 「ど、どうして……?」 響子が五代のものから口を離しうめく。 自ら五代のものを口にしながら満足させてあげられないという現実。 これまでなら響子が口ですると五代はすぐにうめき声をあげ喘ぎ始めたものだ。 響子はすぐにでも五代を満足させることができるつもりであったし、今まではそうであった。 しかし……。 響子は恥ずかしさのあまり俯き肩を落とす。 五代はそんな響子の肩に優しく手を添える。 「そんなに気にしないでください、響子さん」 「だ、だっ……」 「この間久しぶりに響子さんに口でしてもらったとき思ったんですよ。もしかしたらこれ我慢できるんじゃないかって。久しぶりだったから我慢できませんでしたけどね」 響子が恨めしそうに五代を見る。 「その……理由は簡単なんです。おれが……その響子さんを何度か抱いているうちに……響子さんに慣れちゃったってことなんです……」 「えっ……?」 響子が上目遣いで五代を見る。 「最初の頃、響子さんを抱くだけでおれはいっぱいいっぱいでした。もちろん口でしてもらった時なんてもう我慢するのに必死でしたから」 そういって五代は初めて響子を抱いた日のことを思い出す。 「でも響子さんは知らないかもしれないけど……最近ではおれ、響子さんの反応を確認してから終わらせているんですよ」 響子はいつも最後には前後不覚に陥っていることが多い。 それでも思い当たることはある。 「あたしじゃ不満……なんですか……?」 響子が声を震わせる。 「ち、違います。響子さんの体はいつだって最高です」 五代が必死になって響子を説得する。 「坂本なんて5,6回抱けば飽きるって言ってるくらいなんです。それに比べたらおれは響子さんに慣れるのに半年もかかったわけで。それくらい響子さんは魅力的なんです」 五代が真剣に響子を諭す。変に機嫌を損ねてもらってはこまるのだ。 「本当に?」 響子が五代を疑いの目で見る。 「本当です。いつだって響子さんがおれの最高なんですから」 五代が必死に響子を持ち上げる。 「じゃあ……何がいけないんですか……?」 響子が弱弱しい声で尋ねる。 「あの……最初の頃は口にしてもらって少し刺激してもらえばそれだけで良かったんです。でも最近はもうそれだけじゃちょっと……」 五代がばつが悪そうに口ごもる。 15. 管理人室にきまずい沈黙が訪れる。 「……わかりました……」 響子がうつむいたまま重い口を開く。 響子だってもう立派な大人の女。 五代の言いたいことはわかる。 つまり……五代はもっとうまくやってくれと言っているのだ。 響子にとってはすさまじい屈辱だ。 下手だと言われた様なものなのだ。 しかし、今まさに五代を満足させることができなかった。 これでは五代の言葉を否定することができない。 響子は……屈辱に震えながら言葉をひねり出す。 「どうやればいいのか……教えてください……」 言った瞬間響子は終わったと思う。 再婚で常識的に経験も多いはずの自分が年下の五代にフェラチオのやり方を教わる。 それは五代が想像する以上に響子にとっては屈辱的なことであった。 今まで五代に好きなように抱かれ、様々な恥ずかしい言葉を言わされたりしてきた。 五代に組み敷かれ意識を飛ばした無防備な姿を晒してしまうのも既に当たり前のことのようになってしまっている。 しかし、口でするときだけは主導権を握ることができた。 その時だけはいつもの自分に戻ることができた。 だがそれも終わる。 これからはどんなに五代にうめき声をあげさせてもそれは五代に教えこまれたテクニックということになる。 「いいんですか、響子さん?」 五代は思わず響子に尋ねる。 「仕方ないじゃないの……」 響子はうつむいたまま少し声を震わせてつぶやく。 そんな響子の姿に五代は思わず響子を抱きしめ謝りたくなる。 二人の大事な記念日である初夜に世界で一番大切な響子を悲しませてしまう自分自身が嫌になってくる。 しかし、そんな五代の感情も響子に自分の望むとおりにしゃぶらせるという甘美な誘惑の前には無力であった。 16. 「響子さん……」 五代が遠慮がちに自身を響子に近づける。 仕方なく響子は五代のものを見つめる。 これから何年も付き合っていくことになる五代のものは初めてみた時よりも少し黒がかったように見える。 響子は威圧するように反り返る五代の竿を再度掴む。 そして観念して口にしようとすると五代が響子に指示を出す。 「まず、今握ってるとこを舐めてください」 言った瞬間、五代は自分の体が熱くなるのを感じる。 いよいよ響子に好きなようにフェラチオさせることができるのだ。 興奮を悟られないように五代は息を呑む。 響子は五代のいうとおりに竿の部分を舐め始める。 ネコのようにぺろぺろと舐める響子。 「頭を傾けて唇で挟んで……」 五代の言葉どおり響子は唇で五代のものをはさみ締め付ける。 「はさんだまま唇でしごいてください」 五代の言葉に響子は唇で五代の竿を下から上までしごきあげる。 「いいですよ響子さん。次はおれの裏側を舐めてください」 「はい……」 響子は五代のものを右手で反らせて裏側を舐めあげはじめる。 「響子さん、もっと緩急をつけて」 五代の指示が飛ぶ。 その言葉に響子は舌先での刺激を強めたり弱めたりする。 「いいですよ。響子さんはその辺の強弱が甘かったんです」 五代が仁王立ちのまま自信満々に響子に告げる。 いつもの響子なら五代の物言いに反発したであろう。 そんな言われ方をされたら本気で怒ってしまったに違いない。 しかし今は違った。 響子はもしこれで五代を満足させることができなかったら一人の女として生きていくことができなくなってしまうような錯覚に陥ってしまっているのだ。 響子は五代の言うとおり熱心に舐める。 今の自分の姿が五代の目にどんな風に映っているのかも気にならない。 ただ一人の女として五代に満足してもらいたい。 「舌先で裏の筋に沿って……」 「はい……」 響子は五代のいうとおりに五代の裏筋に沿って舌先を擦り付ける。 五代は自分の言うとおり素直にフェラチオを続ける響子に、それだけで早くも我慢できないものを感じ始める。 ずっと高嶺の花だった響子。 付き合い始めた頃から既に半年を経過したがその思いは変わらない。 情けないことに長年の癖で今でも言いたいことが言えずつい響子に対して卑屈になってしまう瞬間がある。 その響子に自分の言うとおりフェラチオをさせる。 もはや坂本たちの妄想への反発も消えている。 今この瞬間、響子は完全に五代に服従している。 響子を従わせる快感は五代の興奮をさらに高め、五代はもっともっと響子を辱めたくなる。 17. 「いいですよ、響子さん。次はおれのこいつを口にいれてしゃぶってください」 五代は自身を見せつけながらあえてしゃぶるという表現をする。 それは響子の反応を見るためであった。 そして響子は五代の期待通りの反応を示す。 響子は頬を染め恥ずかしそうにしながら五代のものをみつめる。 (さっきより大きくなってる……) 響子はそそり立つ男から目を逸らすことができない。 明らかにそれは響子の舌と唇で完全に勃起している。 (やだ……目を離せない……) 響子は思わずその逞しい肉棒に貫かれる自分自身を想像してしまう。 (これを挿れられたら……) 響子はごくりと息を呑む。 五代は響子の様子を満足して見つめながら目ではやくするよう合図を送る。 我に返った響子は恥ずかしそうにしながら五代のものを口にする。 しゃぶる、という表現。 やはり響子は露骨な表現を恥ずかしがる。 そしてその羞恥の先にあるもの。 響子は気づかれていないと思っている。 しかしそれは誤りであった。 かなり前から五代はそのことを疑っていた。 そして先日のホテルでその考えに確信を持つまでにいたった。 今までは思い過ごしかもしれないと思い響子に遠慮していた。 しかしこれからは違う。 五代は響子にさらに指示を告げる。 「ゆっくりと舌全体でなぞるように擦り付けてください」 「うう……」 響子の顔が屈辱に歪む。 口でするだけでも恥ずかしいのにいちいち五代にやり方まで指図される。 そして五代のいうとおりにすると明らかに五代が反応する。 舌に伝わる五代の感触は先ほど自分がしていたときと全く違う。 ドクドクと激しく脈打つ様は五代の興奮をそのまま映し出しているかのようだ。 「響子さん……?」 五代のものを咥えたまま動きが止まってしまった響子に五代が声をかえる。 「な、なんでもありません……」 響子は五代の言うとおりに舌を五代の亀頭の側面に擦りつけ始める。 五代は自分の言うとおりに従う響子を見下ろす。 冷静に見て、やはりこれまでの響子の性技は未熟だったようだ。 その証拠に自分の言うとおりにしゃぶる響子に五代は声を抑えるのに精一杯だ。 今まで気持ちいいと感じていたのは響子のテクニックではなく響子に舐めてもらっているという五代の心理的なものがあまりに大きすぎたということを改めて認識する。 18. 「もう少し強弱を付けてみてください」 響子は五代のものをくわえたまま少し頷いてみせる。 そして五代のいうとおり亀頭を舐め回しながら時々より強く舌先を擦り付けてみる。 「うっ……」 五代は思わずうめき声をあげる。 響子はその声に聞き覚えがある。 これまで響子が口でするたびに五代があげていたうめき声だ。 (五代さん、喜んでくれてる……) 響子は少し自信を取り戻し五代に言われたとおり舌全体で亀頭を舐め続ける。 五代はただ響子の口の温かい感触とその心地よい舌の愛撫に身を委ね始める。 なにも指示がないため響子は夢中になって五代の亀頭に舌の表側と裏側を交互に擦りつける。 「……」 五代は響子のしっとりとした黒髪を撫でながらその表情を観察する。 思ったとおり響子の表情はさっきまでと全く違っていた。 顔全体に赤みが差し瞳を潤ませるその姿は完全に欲情した女の姿だ。 「響子さん……」 五代の呼びかけに響子が顔を上げる。 「そのまま……口先をすぼめていつものように……」 五代はぎらぎらと目を光らせ興奮した表情で響子に指示する。 もちろん響子にもその口調から五代の興奮がはっきりと伝わる。 響子は五代のものを咥えたまま口を前後させ始める。 一見いつもと同じように見える響子の動き。 しかし細かいところが違うのだ。 亀頭の下側に舌をあてがいそのまま口先をすぼめてゆっくりと奥深くまで五代のものを咥えこむ。 唇による摩擦は亀頭だけでなく竿の部分にも及び五代の快感を呼び込む。 同時に舌の表面で五代自身の裏側が刺激され続けるのもたまらない 「きょ、響子さん!」 五代があまりの快感に思わず叫ぶ。 想像以上の成果だ。 これまでの響子の口腔愛撫とはまったく違う。 唇での刺激を重視して素早く口を前後させるときもあれば、口に含んだまま舌の表と裏の両面を五代自身のいたるところに交互に擦りつけたりする。 我慢の限界を迎えそうなほどに追い詰められた五代は髪を撫でていた両手を響子の頭に添える。 19. 響子は五代の反応にひとまず安堵する。 今までは何も考えずに五代のものを口にしてきた。 それでも五代は十分に感じてくれていたのだからそうなるのは仕方のないことであった。 しかしそれを今日、五代に否定されてしまった。 だからこそ屈辱に身を焦がしながらも五代の指示に従った。 そして五代の指示を受けるうちに響子はわかってきた。 今まではあまりに単調すぎたのだ。 その証拠に響子が少し変化をつけて舌で愛撫すれば五代はそれだけで我慢できずうめき声をあげる。 響子は五代が激しく感じ始めた気配に気づき一旦咥えるのを止める。 「きょ、響子さん……?」 五代はこれからというところでやめられてしまい思わず不満の声をあげる。 響子はすっかり自分に夢中になり始めた五代の竿の部分を手でしごきながら亀頭の側面を焦らすように舐めはじめる。 五代が尿道口の割れ目を舌先で擦られると我慢できないことを思い出した響子はわざとその部分の周りを重点的に舐める。 「響子さん、その……さきっぽも……」 五代が最も敏感な部分も舐めるように響子に求める。 響子はそんな五代を上目遣いに見る。 五代のものを右手でしごきながら亀頭の側面を下から上に焦らすようにして舐める響子の姿はあまりにも卑猥だ。 「じ、焦らさないで……」 五代が興奮した口調で喘ぐ。 響子は五代の言葉におもむろに最も敏感な尿道口に舌先を押し付ける。 ただ押し付けるのではない。 時々強く押し付けたまま割れ目を上下に擦ってみる。 「響子さん……す、すごく……いいです……」 五代が苦しそうにつぶやく。 「んんっ……んむんむ……」 響子も無意識のうちに口から漏れる淫らな喘ぎ声で五代にこたえる。 知らぬ間にすっかり夢中になってしまっている響子は五代の欲情を煽る自身の喘ぎ声に気づきもしない。 床に正座して仁王立ちの五代に仕える響子。 響子自身は気づいていないが誰がどう見ても今の響子はフェラチオを望んでやっているようにしか見えない。 もちろん五代もわかっている。 響子の昂ぶりははっきりとその顔から見て取れるのだから。 そんな響子の表情に我慢できず五代は響子の後頭部を自分の股間に押し付け一気に自身を響子の喉奥まで捻り込む。 (ああ……) 響子は心の中で悲鳴とも喝采ともいえぬ声をあげる。 それはすでに響子の忌み嫌う行為ではない。 ……待ち望んでいた行為なのだ。 20. 響子は口いっぱいに五代のものを捻りこまれ息をするのさえ苦しい。 必死に鼻で息をするが深く息を吸い込むたびに五代の男の匂いが体中に充満し、淫らな空気に犯されてしまった様な感覚に陥る。 それでも……響子は止めて欲しいとは思わない。 むしろもっと続けて欲しいとすら思う。 その期待に応えるように五代は腰を前後に動かし、その太さと熱さで響子の口内を陵辱する。 (だめだ……) 響子は心の中でうめく。 もうどうしようもないと響子は思う。 他人はごまかせても自分自身はだませない。 やはり響子は……五代に口を陵辱されると感じてしまうのだ……。 普段逆らうことのない五代に口内を無理矢理乱暴に汚される響子。 はしたないことにもっともっと汚してほしいとすら思い始める。 (もう……我慢できない……) 普段の優しい五代とのギャップに響子の胸は熱くなる。 (早くあたしの口に出して……) 精液を口に出され無理矢理飲まされるその瞬間をいまや遅しと待ち構える。 「響子さん……すごく……」 五代があまりの興奮につぶやく。 そして響子の苦しそうな表情に興奮しながらもさすがに悪いと思い響子の口から少し腰を引く。 そしてゆっくりと腰を動かしながら響子の表情をじっくりと観察する。 (見られてる……) 響子は五代が自分の表情を覗き込んでいることに気づきうろたえる。 (もっといやそうな表情をしないと……) しかしどんな表情をすればいいのか響子にはわからない。 実際、乱暴さが消えた五代の腰の動きに響子の表情から苦しさは消え、今は全く違う表情になっている。 その響子の表情に……五代の興奮は最高潮に達する。 なにしろ響子は嫌がるどころか恍惚の表情を浮かべてしまっているのだから当然だ。 「このまま口に出されてしまいたいんですよね」 五代が腰の動きを止めつぶやく。 「!!」 響子は思わず目を見開いて五代を見る。 (こ、この人……) 「まさか、おれが知らないとでも思ってるんですか?」 五代が興奮した口調で続ける。 (そ、そんなまさか……) 響子は呆然とする。 そんな響子に五代が最後通告をする。 21. 「響子さんは昔からおれより立場が上だって思ってますよね」 五代は響子の反応をみながらゆっくりと言葉を続ける。 「それは当然です。おれ達二人の関係はおれの一目ぼれから始まったんですから。だから無理矢理恥ずかしいことをやらされたり言わされたりすると、普段の響子さんなら怒って機嫌が悪くなるはずです。でも……」 五代は言葉を切って響子のもうやめて欲しいという表情を楽しみながら続ける。 「でも布団の中での響子さんは違います。実際には怒るどころか……逆にいつもとは比べ物にならないほど興奮しちゃうんですよね」 「……っ!!」 響子はショックのあまり一瞬我を忘れる。 五代に見抜かれていたショックは響子から言葉を奪いぴくりとも動けない。 「そしておれは……そんな響子さんの姿に……凄く興奮します」 五代は呆然とする響子を見下ろしてつぶやく。 「このまま響子さんの口に出したら……すごく興奮するんじゃないですか……?」 五代はそう告げると一気にスパートをかける。 息苦しさとジュブジュブと音を立てる自身の唇に響子は我に帰る。 「んん……んぐんぐっ……」 響子はやめてと言おうとする。 ここまで辱められてしまったうえに口に出されてしまっては響子は自我が保てない。 しかし口を塞ぐ五代の肉棒にそれは言葉にならない。 それどころか響子が口に出されるのを嫌がる様子は五代を激しく燃え上がらせてしまう。 「出しますよ、響子さん」 五代が響子に限界を告げる。 (ああ……) 響子は自分自身に絶望する。 ここまで辱められても……響子は五代の言葉に背徳の悦びを感じてしまうのだ。 五代の思うように口内を汚され精液を飲まされる。 響子は想像しただけで既に興奮でおかしくなってしまいそうだ。 羞恥と興奮に震える響子の口中で五代の分身は今日一番の膨張を見せる。 そして最後に響子の口内をくまなく陵辱すると五代は響子を股間に押し付け一気にその精液を放出する。 ドピュピュ…… 五代の精液が響子の口内を汚す。 五代は左手を響子の顎の下にいれて顔を上げさせ右手を響子の後頭部に添えて響子を股間から逃げられないように固定すると口内に射精される響子の表情をじっくりと観察する。すこし涙ぐんだ響子の表情に五代の射精はいつもより長めでしばらく止まらない。 「……ん……んんっ!んぐっ……んぐっ……」 響子は逃げることもできずうめき声をあげながら精を喉奥に受けるしかない。 結局……これまでと同じように飲まされる。 響子が飲み干すまで五代の腕の力が抜けることはなかった。 粘つく液体が喉を通り抜ける久々の不快さもそれほどでもない。 いつの間にかすっかり慣れてしまっているのだ。 いつものように五代の竿をつかみ最後の一滴まで搾り出し口にしてやっと響子は解放される。 響子はフェラチオを強いられ精液を飲まされたという現実よりも、それを不快に思うどころか悶え悦ぶ自分自身が恥ずかしくて仕方がない。 22. 一方の五代はうつむいたままはぁはぁと肩で息をする響子に夫というより一人の男として凄まじい優越感を得る。 もともとフェラチオは男の征服欲を激しく満足させる行為だ。 それも年上の新妻にしゃぶり方まで仕込み、精液を飲ませる征服感は筆舌に尽くしがたい。 それは披露宴の時、妄想するしかなかった男達との決定的違いでもあった。 しかし、ふと我に返るとやはりやりすぎたのではないかと思い始める。 「響子さん……」 五代はおそるおそる響子をできるだけ優しく抱きしめる。 そして響子の動悸が治まるのを待って五代は響子の顔をうかがいながら尋ねる。 「怒ってますか……?」 五代の質問に響子は顔を背けこたえない。 というよりこたえようがない。 響子の心の中には自身への羞恥と五代への怒りと……激しい満足感が混在しているのだ。 そんな響子の複雑な表情に五代はどうすればいいかわからない。 「すみません。おれ、自分が抑えられなくなっちゃって……。でも響子さんが本当にいやならもう今みたいなこと二度としませんから」 響子の気持ちがわかりかねる五代は今の心情を素直に告げる。 響子は自身を優しく抱きしめる五代を見上げる。 五代はいつもの五代に戻っていた。 普段、響子の気持ちを何よりも大切にしてくれる五代。 五代に抱きしめられるとそれだけで心が落ち着いてしまう。 響子は改めて自分が信じられないくらい五代のことを好きになってしまっていることを自覚する。 そして好きだからこそ……こんな自分を知られたくなかった……。 「いつから……知ってたんですか……?」 響子がうつむき尋ねる。 響子がなにを聞いているのか、それはあまりにも明らかだ。 「ずっと前から疑ってましたけどこの間のホテルで間違いないなって思いました」 五代が素直にこたえる。 「そうです……か……」 響子はうつむいたままだ。 「軽蔑……してますか……?」 響子が急に肩を震わせながら五代に尋ねる。 「そ、そんなことありません!」 五代が即答する。 「あたし、恥ずかしいです。自分がこんな女なんだって知られてしまって……」 響子の落ち込む様子に五代はあわてる。 思い込みが激しい響子のこと、このままでは何を言い出すかわからない。 五代は無理矢理言葉を続ける。 「あんまり恥ずかしがらないでください」 「……」 「その……おれたち夫婦なんだからお互い、人に知られたくないことも見えてしまいます。でもそれをお互いに受け入れ合うのが夫婦じゃないですか」 「……」 「おれは今この瞬間も響子さんのことが好きで好きでたまりません。今日は響子さんのことをもっとよく知ることができて嬉しいくらいですし……」 五代は自分でも何をいっているのかよく分からないまま言葉を続ける。 「おれが気にしてるのは響子さんにやりすぎてしまわなかったかなってことだけです。だって……おれが響子さんのこと嫌いになるわけがないじゃないですか」 「……」 響子からの返事はない。 しかし五代は真剣に言葉を発し続ける。 その真剣さに響子も五代の言葉を素直に受け入れようと考え始める。 23. 「もう……いいですから……」 響子は五代の背中に手をまわしてつぶやく。 響子はまだ恥ずかしいと思っている。 ただ夫である五代はこんな自分を今までどおり受け入れてくれることだけははっきりとわかった。 響子にとって、それが一番大事なのだ。 それに五代にここまで心配してもらえるともうそれだけでそれ以外のことはどうでもよくなってくる。 五代は響子が軟化したことに気づく。 響子は泣いたり怒ったり感情の起伏が極端で激しい。だからこそ五代は響子を見る目がいつの間にか鋭くなっている。 五代は響子を安心させようと唇を重ねようとする。 「だ、だめ……」 響子が顔を背ける。 そんな響子の様子に五代はやはりまだ怒っているのかと一瞬悲しい表情になる。 「ち、違うんです……」 響子は少し慌てる。 「えっ……?」 「その……あたし、口でしたばっかりで……。ちょっとゆすいできます」 響子はそう言うと立ち上がり台所に向かおうとする。 しかし、五代はそんな響子の腕をつかみまたも抱き寄せる。 「えっ……?」 響子は思わず驚きの声を発する。 「そんなこと気にしてませんから……」 五代はそうつぶやくと響子に優しく口づけする。 「……ん」 響子は五代の口づけを素直に受け入れる。 優しく抱きしめられながら唇を重ねられると驚くほどあっさりと幸せな気分になる。 「ねえ、響子さん……」 「はい……」 「布団に行きましょうか……」 五代は響子を誘う。 五代は響子をゆっくりと心の底から愛したいのだ。 管理人室の電気が消えたのはその数分後のことであった。 ------------------------------------------------------------------------------- (後編) 1/12 明かりが消えた真っ暗な管理人室で男女二つの影がうごめく。 もちろんそれは五代と響子の二人だ。 暗闇の中、五代は座ったまま響子を後ろから抱きとめ、浪人時代からの憧れの象徴である乳房をゆっくりと揉みほぐす。 すると当然のように響子の口から熱い吐息が漏れる。 響子は五代に後ろ抱きにされるこの体勢がいつの間にか気に入っている。 五代と身体が密着する部分が広く、なにより五代に受け止められているという安心感から響子は愛撫に身を任せることができる。 もちろん五代とて同じことで、乳房も秘所も好きなように愛撫できるし、響子の背中から響子がいつ感じているのかダイレクトに伝わるのが興奮を誘う。 いざ挿入するにもいろいろな体位への移行もスムーズで、顔を振り向かせるとキスもできるし耳元で囁いたり息を拭きかけたりもできる。 二人の思惑が合致し最近はいつもこの体勢から営みが始まる。 「今日はたくさんの人達が響子さんで妄想してますよ、」 五代は響子の耳元で囁きながら響子の胸の感触を楽しむ。 「どうしてそんなこと……」 「響子さんが綺麗過ぎましたからね……。男なら間違いなく響子さんで妄想するか奥さんや彼女を響子さんに重ね合わせて抱きますね」 五代がしたり顔で言う。 響子はどうこたえればいいかわからず黙ったままだ。 「でも本物の響子さんを抱けるのは……」 五代は言葉を切ると響子のうなじを露出させ舐め始める。 「あっ……」 思わず響子が声をあげる。 「今晩は響子さんの体の隅々まで舐めてみましょうか」 「そ、そんな……」 響子が快感に体を震わせながらうめく。 「響子さんのうなじ……すごく……」 五代は響子の髪をたくし上げ舐めあげる。 そしてそのまま首筋から鎖骨の窪みまでゆっくりと唾液を響子の体に滲みこませてゆく。 既に一度出して余裕がある五代はゆっくりと響子の体を弄ぶつもりだ。 「ここなんてどうですか?」 五代は響子の左腕を抱えると普段隠されたままの腋を舐め始める。 「ひいぃ」 響子が未知の感覚に悲鳴をあげる。 「まだ春先なのにきちんと手入れしてありますね。……もしかして舐めて欲しかったんですか?」 五代がいやらしく響子を言葉で責める。 「そ、そんな……。ああっ!!」 五代の言葉を否定しつつも響子はその快感に思わず声をあげる。 「響子さんって……全身が性感帯ですよね」 五代は響子を舌と言葉で辱めながら舌先で腋を刺激すると響子の吐息が更に荒くなる。 (こ、こんなところまで舐められるなんて……) 響子は羞恥のあまり顔が真っ赤だ。 なによりも今日初めて舐められたにもかかわらず快感を得てしまう自身の体が恨めしい。 2/12 「逆も舐めてみましょうか……」 五代はそうつぶやくと続けて右の腋に舌を走らせる。 「ああ……」 響子はまたも喘ぎ声をあげる。 反対の腋を舐められても当然のように感じてしまう響子。 「ふふふ、こっちは結構匂いがきついですよ」 「い、いやっ!!」 匂いがきついなどといわれるのはさすがに我慢できず、響子は五代を拒絶しようとする。 しかしやはり男の力には敵わない。 五代は響子を力ずくで布団に押し倒し執拗に腋を舐め続ける。 「や、やめて……」 響子が快楽におぼれそうになる自分を励まして五代に懇願する。 「こんなところを舐められて興奮するのが恥ずかしいんですよね」 五代はそういいいながら空いた右手で響子の胸のつぼみをくりくりとこね回し始める。 五代は響子を嬲りつくすつもりなのだ。 「だ、だめ……」 響子の顔が快感にゆがむ。 「なにがだめなんですか、こんなに硬くさせてるのに……」 五代は響子の乳首を指で擦り上げながらつぶやく。 「うう……」 響子は五代の思うままに感じさせられてしまう自分の体を嘆く。 五代は響子の腋を散々に唾液まみれにしたのを確認してから響子の顔を覗き込んで言い聞かせる。 「さっきも言いましたけど響子さんはこんな風に責められると普通にするよりずっと感じますもんね」 「そ、そんなこと言わないで……」 響子が体を震わせながら顔を背ける。 「口ではいやだって言ってるけど……おれのをしゃぶるのも大好きですもんね……」 五代は響子の顔を掴み顔を背けることを許さない。 「ち、違う……」 「違いません。おれのを口にしてるとき、響子さんはめちゃくちゃ興奮した表情してるんですよ」 「い、いや……」 「エッチな表情のまま夢中になってしゃぶる響子さんを見てたら……我慢なんてできませんよ」 五代は響子を言葉で散々に嬲り続ける。 「それに口でした後の響子さんってすごく興奮してるんですよ。今日も普段とは反応が全然違いますし」 「も、もう許して……」 響子は目をつぶったまま五代の許しを請う。 五代に見抜かれていたことをまたも思い出し響子はもう体を震わせることしかできない。 3/12 五代はまだまだいじめてみたいがこれ以上やりすぎてはいけないと思い直し響子の体に照準を移す。 まずはその敏感な胸のつぼみに舌を這わせ、舌先で横から正面から舐めあげる。 「あっ……」 突然の刺激に響子が思わず声をあげる。 すでに響子の乳首はそそり立っており、五代にねっとりと舐められると響子の体にぞくぞくとした快感が走り抜ける。 五代は響子の敏感な乳首を舌でいたぶりながら逆の乳房を優しく揉みしだく。 響子のむっちりとした乳房は五代に強く掴まれるとその指の間に柔肉が溢れ出すほどだ。 「初めて会った日から……ずっと……」 五代がしんみりとつぶやく。 「当時はこんな素敵な人が一刻館に来るなんて信じられなくて……」 五代は初めて響子と会った日に一刻館を出ようとしていたことを思い出す。 「もし響子さんが来る日がもう一日遅かったら、おれ達出会うことがなかったんです。そう考えれば運命って不思議ですよね」 五代が感慨深く言葉を続けるが響子はそれどころではない。 響子は執拗に繰り返される快感にはぁはぁと喘ぎ声を出すことしかできない。 「好きです、響子さん」 五代は自分の愛撫に体全身を使って快感を表現する響子にウソ偽りのない言葉を送る。 「初めて会った日からずっと……響子さんと結ばれたいって思ってました」 五代は愛撫をやめ再度つぶやく。 「おれは響子さんが好きです。世界中の誰よりも……大切に思います……」 「ご、ごだ……い……さん……」 響子がなんとか五代の名を呼んでこたえる。 五代は響子が何か言おうとしているのに気づき響子の言葉を待つ。 すると響子が五代の体の下から一言だけつぶやく。 「ずるい……」 「え……?」 五代は響子の予想外の言葉に驚きを見せる。 「こんなにあたしをいじめてるくせに……」 響子はなんとか少し拗ねた表情を作ってみせる。 「でも……」 響子が五代の顔に両手で触れる。 「でもやっぱり……嬉しいです……」 そうつぶやくと響子は五代に自分から軽く口づけする。 「響子さん……」 五代はそうつぶやくと愛撫を再開する。 響子を心の底から満足させたい。それが今の五代の唯一にして最大の願いであった。 五代は両方の乳首を同時に指でつまんだり擦りあげたり乳房の中に押し込んだりして響子に快感を送りこむ。 「ああんっ……!!」 響子は我慢できないといった様子で首を左右に振りながら悶える。 (響子さん、すごく感じてくれてる……) 五代は響子の乳首をくりくりとこねりながら響子をじっくりと観察する。 「腋とかもよかったみたいですけど……やっぱり響子さんは乳首を弄られてるときの反応がぴかいちです」 「うう……」 響子はただうめくことしかできない。反論するどころか秘所の疼きを五代に悟られまいとごまかすのに必死なのだ。 4/12 五代はそうしてるうちに響子の反応の変化に気づく。 これまでの愛撫でも確かに響子は感じていた。 しかし、乳首を弄りだしてから響子の体に確実に変化が起こっている。 つまり響子の体から完全に硬さが消え……五代を受け入れたがり始めているのだ。 もちろん五代がそれを見逃すはずがない。 「響子さんの心と体がとろけだすこの一瞬がたまりません」 五代は顔をそらせたままの響子に言葉を続ける。 「そろそろ……欲しいんじゃないですか?」 五代は悶える響子の姿を楽しみながら尋ねる。 「ち、違う……」 響子は必死になって五代の言葉を否定する。 五代には響子が本当はもう挿れて欲しがっていることがわかる。 しかし言葉のうえでは響子はそれを否定している。 身体は完全に五代に屈服してしまっているのにそれを認めようとしない響子。 しかしだからこそ……五代は響子を思うがままにしたい。 「響子さんが違うと言うんなら仕方ありません」 五代はそうつぶやくと……響子の体を起こし最初と同じようにまたも後ろ抱きにする。 そしてゆっくりと……響子の秘所に指に侵入させる。 「んん……」 響子の口から熱い吐息が漏れる。 十分すぎるほど濡れそぶった響子の秘所は違和感なくあっさりと五代の指を受け入れる。 五代は右手の指で秘所の中をこねくり回しながら左手で乳房を揉みしだく。 響子は完全に五代に体を預けその快感に酔いはじめる。 五代の指先はいつものように最も響子が感じる部分……世間ではローマ字とカタカナで表現される部分を的確に刺激する。 「……んんっ……ああっ!!」 響子は我慢できずまたも喘ぎ声をあげる。 気がつけば五代の足で股を完全に開いた状態に固定されてしまっている。 「響子さん、見てくださいよ」 五代は響子が異様に恥ずかしがる行為をいつものように実行に移す。 つまり……秘所から抜いたばかりの二本の指を響子の眼前でゆっくりと開き、粘つく愛液が糸を引く様子を見せつける。 「い、いや……」 響子は思わず顔を逸らす。 「ちゃんと口できれいにしください」 五代はその愛液で十分に濡れた指を響子の口にゆっくりとねじりこむ。 「んん……」 響子は反発するが、五代に指を無理矢理口にねじこまれ愛液を舌でふき取らされる。 「まだまだ溢れてますよ」 五代はそうつぶやくと何度も何度も愛液をたらす指を響子の口にねじ込む。 しかし何度繰り返しても響子の秘所の潤いが消えることはない 響子は口に指を突っ込まれ、舐めさせられるこの状況にすら興奮し始めているのだ。 5/12 「きりがありませんね」 五代はそうつぶやくと響子を仰向けに横たえ両足を思いっきり開かせ押さえつけると、股間に顔を埋め直接舌で舐め始める。 「だ、だめ……」 あまりにはしたない姿勢に響子が抵抗のセリフを口にする。 しかし、その口調に抵抗とは違う響きが含まれ始めていることに五代は気づく。 (もう少しだな……) 五代は響子がまもなく自分から求め始めるだろうと感じ更なる攻勢に出る。 五代は秘所の奥を指の腹で弄りながら響子の最も敏感な突起を舐め上げる。 「ああっ!!」 響子はまたも思わず声をあげる。 秘所の内側と同時に責められて我慢できるはずもなく響子は体をのけぞらせる。 「欲しくなったらいつでも言ってください」 五代が響子にそっけなく言う。 五代は響子から求めさせるつもりなのだ。 「ああっ……!!」 響子の口から悦びの声が漏れ続ける。 あまりの官能にもう自分がすっかり昂ぶってしまっていることを隠すことすらできない。 (も、もう……ほんとにだめ……) 響子は全ての感覚を投げ出し快楽に身をゆだねようとする。 しかし五代は響子が今にも果ててしまいそうなその瞬間、秘所への愛撫をやめる。 「えっ……?」 響子は驚きの声をあげる。 しかし五代はそんな響子の反応を無視して体をうつし今度は乳房を愛撫し始める。 (ど、どうして……) 響子は呆然とする。確かに乳房からも官能を得ることはできる。 しかしそれでは既に物足りないほどに身体は興奮しきってしまっている。 響子は五代の愛撫に身を委ねながらももっと強い刺激を欲し始める。 すると響子の意図を汲んだかのように再び五代の指が響子の股間の性感帯を愛撫し始める。 (ああ……そうよ……) 響子は心の中で悦びの声をあげる。 しかしその響子の期待はあっさりと裏切られる。 五代の指は響子の秘所の周辺や入り口付近をなぞるだけで響子が望む部分を明らかに避けているのだ。 既に昂ぶりきっている響子にとって、五代の指の動きをあまりにもどかしい。 しかし、五代は相変わらず響子の意図に反する部分をなぞるだけ。 響子は自分でも気がつかないうちに五代の指が望む場所に届くよう身体を自然にくねらせてしまっていた。 もちろん五代がそれに気づかないわけがない。 6/12 「何してるんですか?」 五代が響子に満を持して尋ねる。 その言葉に響子ははっと我に返る。 「そんなに弄って欲しいんですか?」 無意識のうちの行為とはいえあまりにも淫らな自分自身に響子は穴があったら隠れてしまいたいほど恥ずかしく感じる。 「その予想通りの反応がすごくかわいいんですよ」 五代はそんな響子を見下ろしながらようやく響子が望む場所に指を這わせる。 「ああっ……!!」 情けないことにここまで辱められても響子の身体はあまりにも正直に反応してしまう。 ついに秘所をまさぐりはじめた五代の指に、熱い愛液を溢れさせてこたえる響子。 そそり立つ突起は五代に何度押し込まれてもすぐに元の姿を取り返すほど。 「響子さん、そろそろ……欲しいんじゃないですか?」 五代が再度響子に尋ねる。 「……」 響子は思わず肯定しそうになるがわずかに残った羞恥心でそれを押さえ込む。 「恥ずかしがらないで……」 五代が耳元で囁きながら響子を淫らな世界に誘う。 響子の羞恥心はまたもそれを拒絶しようとする。 しかしそれはあまりにも弱いものであった。 「で、どうなんですか?」 五代に再度尋ねられた瞬間、あまりにもあっさりと響子の口から言葉が発せられる。 「ほ、欲しい……です……」 響子は声を震わせながら小さな声でこたえる。 「やっと素直にいえましたね」 五代が勝ち誇ったようにつぶやく。 一度口にしてしまえば響子を止めるものは何一つない。 響子の口から五代を求める言葉が湯水のように湧いてくる。 「は、早く……ください……」 響子が五代を求めるセリフをはっきりと口にする。 「ふふふ……」 五代がにやりと笑う。 響子は一度おねだりをしてしまうと後はもう何度でもおねだりしてしまう。 響子はもう完全に五代の思うとおりなのだ。 「前からと後ろから、どっちがいいですか?」 「そ、それは……」 響子が一瞬口ごもる。 響子に好きな体位を言わせるのは時間の問題であったが実は五代自身がもう限界であった。 目の前の成熟した色気を放つ女体を前にもう我慢できないのだ。 五代は無言のまま響子をうつぶせにさせる。 もちろん響子もすぐに五代が後背位を望んでいることに気づく。 五代は響子のお尻に手を添え、尻を掲げさせると五代は響子のお尻の肉を広げ秘所をはっきりと目視する。 7/12 (そ、そんなに見ないで……) 響子が心の中で悶える。 響子のそれは明らかに潤みを湛え五代の男を今や遅しと待ち構えている状態だ。 五代は目の前の愛妻のあまりに淫らな姿に震えながら自身の欲望の象徴をしかるべき箇所にあてがう。 一気に貫きたいという衝動を抑え五代は少しだけ響子に挿入する。 「ああっ!」 それでも響子の体は敏感に反応する。 しかし、やはり足りない。 響子は奥まで貫いて欲しいのだ。 「響子さん、もっと気持ちよくなりたいんじゃないですか?」 五代が響子に尋ねる。 「……」 「じゃあまたお願いしてくださいよ、こんな風にしてくださいって」 五代は容赦なく響子を最も奥深くまで貫く。 「あ、ああ……」 響子が快感に震える。 「言わないとやめちゃいますよ」 五代は体を倒し両手で響子の乳首を弄びながら響子の耳元で囁く。 「あっ……あっ……」 しかし響子はあらたな刺激に声をあげることしかできない。 「ほら、喘いでばかりいないでちゃんと言ってください」 五代は腰の動きを止めて響子の背中を舐めながら言葉を待つ。 「そ、そんな……」 響子は五代のあまりといえばあまりな言葉に何も言うことができない。 「早く言ってください」 五代は響子から一旦抜きながら言う。 「ぬ、抜かないで……」 抜かれてしまったことに気づいた響子が五代に懇願する。 「また挿れて欲しいんですよね……?」 「は、はい……」 五代の言葉に素直にうなずく。 「じゃあちゃんと言ってくれないと」 五代は響子の言葉に耳を傾ける。 「あ、あの……」 響子は思わず躊躇する。 響子が躊躇する様子に五代は再度響子を奥まで貫く。 「あ、ああっ……」 響子は待ちに待った快感に体を震わせる。 しかしそれは一瞬のことであった。五代はまたもあっさりと抜いてしまったのだ。 「言わないともうこれで終わりにしますよ」 五代が心にもないことを言って響子に屈服を強いる。 そんな五代の言葉に響子はもう我慢できない。 8/12 「ご、五代さん……」 「はい」 「五代さんので……一番奥まで……。お願いだから……奥まで……」 響子の言葉に五代の興奮が頂点に達する。 「わかりました」 五代はそうつぶやくと響子の言葉が終わるや否や五代は再び己自身で響子を勢いよく貫く。 「今日も響子さんの中にたっぷりと出しますから」 五代はそう宣言すると野生動物のように遠慮なく思いのままに腰を突き動かす。 「あっ!! あぁんっっ!!」 響子の体中を衝撃が走る。 十分すぎるほどに潤っていた響子の秘所は五代を何の抵抗も無く受け入れる。 逆に五代の方が拍子抜けしてしまうほどだ。 「いきますよ、響子さん」 五代が気合をいれ腰を動かすたびに響子の体が揺れる。 五代は自身と響子の膣壁が擦れあう感触をじっくりと愉しむ。 響子の中の生暖かい感触と必要以上に溢れる愛液がグチュグチュと淫らな音たてる様子がたまらない。 そしてなによりも響子の反応がいい。 五代が突き入れるたび響子の喉から喘ぎ声が吐き出される。 その声は十分な高さと音量で五代を満足させる。 五代がゆっくりと出し入れすると突き入れるたびに響子の口から悦びの声が、半分以上抜いてしまうと残念そうなため息が漏れる。 その露骨な響子の反応がいいのだ。五代は今まさに響子を好きなように喘がせることができる。 一方、響子は快楽に溺れていた。 「はあっ!!あんっ!!あっあっあっ……!!」 毎回奥深くまで貫かれその毎に悩ましい喘ぎ声が漏れてしまう。 響子は何も考えられず快楽を貪る。 五代に突かれるたびに豊満な乳房揺らし淫らな喘ぎ声をあげる響子。 今現在、体の奥底からこみ上げてくるぞくぞくとした刹那的な快感に身を委ねることしか響子の頭の中にない。 そんな響子の様子に五代はとどめとばかりに響子の最奥部分に自身の先端をぐりぐりと擦りつける。 「ひ、ひぃ……」 響子が冗談のような悲鳴をあげる。 それと同時に響子の秘所がまるで生き物のように五代を少しずつ締め付け始める。 (もう少しだ) 五代は響子が達する寸前にあることを響子の秘所から直接あまりにも分かりやすい形で知る。 五代は自信を持って響子を責め始める。すると…… 「そ、そこよ……そこをもっと……」 快感のあまり響子自身の口から弱点を認める言葉が漏れ始める。 「きょ、響子さんっ!」 五代が響子の言葉に力を得、さらに響子を責め続けると……響子はいつものように頭の中が真っ白になっていく感覚に襲われる。 (やだ、こんなに簡単に……) 響子は思わず抵抗しようとする。しかしそれはまさに無駄な足掻きであった。 そのわずか数秒後…… 「………っ!!!」 響子は言葉にならない叫び声を上げると……あっけなく身体を震わせながら布団の上に崩れ落ちてしまった。 9/12 あまりにも容易い響子の陥落。 しかしそれは五代の予想通りの姿に過ぎない。 五代はぐったりとした愛妻の両腕を掴みのけぞらせると間髪いれずピストン運動を再開させる。 「ちょ、ちょっ……待って……」 あまりに突然の再開に響子が五代に泣き言を言う。 しかし五代はそんな響子を無視して自身の欲望を響子に叩きつける。 「あっあっ……!!」 五代の若く荒々しい欲望の前に結局またも成す術もなく悶え喘ぎ始める響子。 普段の響子の喘ぎ声は隣の一の瀬一家に聞かれてしまう恐れがあるためかなり控えめといえる。 しかし今日はいつも以上に焦らされてしまったためか響子はその快感に自分を抑えることができない。 五代もいつもの響子との違いに気づく。 「声が大きすぎますよ、響子さん」 他の住人達は5号室にいるため1階は無人のはずだが万が一のことがある。 五代の言葉に響子も声を必死に抑えようとする。 しかし先日のホテルの時と同じようにどうしてもうまく声を抑えられない。 「だ、だめ……。声が……」 響子は状況を説明しようとするがそれすら自身の喘ぎ声でうまく言うことができない。 仕方なく五代は右手で響子の口を塞ぐ。 しかしその行為は五代の予期せぬ事態を引き起こしてしまった。 「くっ……」 五代は思わず苦悶の表情を浮かべる。 響子の口を塞ぎながらのピストンに、五代はなんだか響子をレイプしているかのような錯覚に陥る。 やってはいけないことをしているような、禁忌の感覚は五代の興奮を更に加速させる。 (や、やばい……) 五代は自分が限界が近いことを悟る。 このままでは先に自分が達してしまいかねない。 しかしそんな五代の耳に響子の声が耳に入る。 「もっと……もっと奥まで……」 響子から発せられる五代を求める声。 普段の清楚な響子とは全く正反対のあまりにも生々しいストレートな言葉。 響子も口を押さえつけられて抱かれるこのシチュエーションに五代と同様に燃え上がってしまっているのだ。 欲望を押し付けてばかりの自分を受け入れてくれている響子を前に五代は一か八かの賭けに出る。 「うおおおおっ!!」 五代は奇声を発しながら激しく腰を前後させる。 「ああっ……あああっっ!」 響子も意識を朦朧とさせたまま無意識のうちに五代にこたえる。 五代に体内奥深くに侵入される快感に喘ぐ響子。 響子の温かい感触と悶え狂う様子に今にも放出してしまいそうな五代。 先に限界に達したのは……五代であった。 またも締め付け始めた響子の秘所に抗う余力は五代には残されていなかった。 「で、出る……」 五代のつぶやきと共にダムが決壊したかのような勢いで精液が響子の子宮に流れ込む。 10/12 響子は五代の動きが止まり、響子の中で五代がぴくぴくと震える感触に思わず驚く。 (い、今、出されてるの……?) そもそも結婚式まで避妊する方針だったため、五代が避妊をやめたのはほんの数日前からだ。 そして以前までの住民の目を逃れ隠れるようにして抱かれていたときと違い、ここ最近ともに暮らし始めた五代は、響子を余裕を持ってじっくりと抱く。 それがため、響子は射精の瞬間、いつも前後不覚に陥ってしまっておりよくわからなかったのだが今日は違う。 身体の奥底に精を出される感触が響子にはっきりと伝わってくる。 (ああ……。今、五代さん、すごくいいのね……) 響子は息を整えながら五代を受け入れる。 「ふう……」 五代が思わずため息をつく。 響子を完全に満足させることはできなかったが五代は満足であった。 なによりも我慢に我慢を重ねた末の射精、それも相手は愛する響子なのだからいうことはない。 五代は響子の中にたっぷりと放出し、自らの欲望を満たすとそのまま響子の背中に倒れこむ。 「すみません、我慢できなくて」 お互いに落ち着くと五代は響子に謝る。 「ううん、その……あたしは……十分ですから」 響子が五代の胸に頬をあてたままささやく。 実際、慣れたなどといわれてしまっていた響子は、五代が我慢できないほど興奮してくれたことに少し安心していたというのが本音だった。 響子が無言で五代の身体にしがみつくと五代も響子の背中に手をまわし抱き寄せる。 響子はただそれだけで幸せであった。 包み込まれるように抱きしめられる安らぎにしばらく身を委ねていると……響子の耳元に五代の寝息が届く。 見上げると五代はいつの間にか寝入ってしまったようだ。 (そうよね、昨日からお疲れだしね) 響子は五代が昨日までの連日の宴会であまり睡眠を取れていないことを思い出す。 「お疲れ様でした」 響子は五代の頬に手を添えつぶやく。 響子としてはもう少し色々な話をしたかったところであったが、夫の寝顔を見守っているうちに自身もいつの間にか眠りにつくのであった。 11/12 「……た、朝……よ、起きて……」 五代は誰かが自分を呼ぶ声に目を覚ます。 「まだ眠いんだよ……」 そういって五代は布団をかぶる。 しかし、その布団を急に剥ぎ取られてさすがの五代も目を覚ます。 「あなたっ、いい加減に起きて下さい!」 「は、はいっ!」 響子のきつい声に五代ははっきりと目を覚ます。 「すぐに顔洗って、歯も磨いて。もうあんまり時間ありませんよ」 響子が五代をせかす。 布団をたたみながら時計を見ると新婚旅行の出発まであと1時間しかないことに気づく。 五代はいそいそと廊下に朝の準備にでる。 トイレを済ませ歯を磨いていると、なんとなく違和感が残っていることに気づく。 その正体がわからぬまま五代が管理人室に戻ると、既に布団は片付けられ、机の上に朝食が並んでいた。 「早く食べちゃってくださいな」 響子が茶碗を五代に渡す。 「10時にはここを出ないと電車に間に合わないんだから……」 ぶつぶつとつぶやく響子に触らぬ神にたたり無しと五代は朝食に取りかかる。 味噌汁を口にしながら五代は響子の様子に目をやる。 ともに朝食を食べる響子はどうやらいつもの響子にもどっている。 素早く朝食を食べ終わると五代は響子に話しかけてみる。 「天気予報だと今日は晴れるみたいですね」 「ええ、晴れるみたいでほんとに良かったです」 響子が相槌を打ってくる。 「あなた、おかわりはいいですか?」 「美味しかった。そろそろ準備しないと」 五代の言葉に満足したのか、響子は差し出した手を引っ込める。 「さて、急いで後片付けしなくっちゃ」 響子はそうつぶやくとお皿を持って後片付けに流しに向かう。 そんな響子の後姿を見ていると、五代は違和感の正体にやっとのことに気づく。 新聞の一面を眺めながら響子の後片付けが終わるのを待つ五代。 そして響子の手があいたのを確認して五代は声をかける。 「ねえ、響子さん」 「なんですか?」 「ちょっとこっちに」 五代が響子を手招きする。 「早く着替えないと間に合いませんよ」 響子はエプロンで手を拭きながら五代に近づいてくる。 「ちょっと座って」 「もう、なんですか……」 響子が五代の横にちょこんと腰を下ろす。 12/12 「響子さん、あの……」 「はい……?」 「五代さんって呼ぶの止めたんですね」 五代の言葉に響子が少し赤くなる。 「……だって昨夜、止めろって言われたから……」 あまりにさりげなくて五代もしばらく分からなかったが……今朝から響子は五代を「あなた」と呼んでいるのだ。 少し恥ずかしそうに俯いたままの響子を見ていると五代もけじめをつけなくては改めて思い、響子の手を取る。 「な、なんですか?」 いきなり手を握られ響子が尋ねると五代は歯切れが悪いながらも口を開く。 「あの……俺たちも結婚式も挙げたわけですし……これからは夫婦として……よろしくお願いしますね」 響子は五代の突然の言葉に驚きながらもその真剣な表情に五代の意図に気づく。 確かに既に籍を入れ一緒に暮らしてはいるものの、やはり両家の親族の前で正式に結婚式を挙げると今までと違った感じがするのは五代も響子も同じであった。 (ふふっ) 響子は心の中で少し微笑むとエプロンを脱ぎ五代に向かってきちんと座りなおす。 「不束者ですがよろしくお願いします」 響子は床に手をつき頭を下げる。 「きょ、響子さん、そこまでしなくても……」 五代が響子の腕を掴み顔を上げさせる。 「それに響子さんは全然不束じゃないですし……」 響子の思わぬ反応に思わず動転する五代。 「ふふっ、こういうことしてほしいのかなって思って」 そう言って響子は首を横に傾けにっこりと笑ってみせる。 その笑顔に五代は……あっさりと撃沈される。 「響子さんっ!」 五代は無意識のうちに響子を抱きしめる。 「やだ、こんな朝から……」 突然の抱擁に響子が顔を赤くする。 「響子さんが悪いんですからね」 五代はそうつぶやくと響子に口づけしようとする。 「ダメです……」 響子は俯いたまま抵抗するものの……結局は五代の口づけを許してしまう。 「もおっ……」 唇が離れると、響子は顔を赤くしながら急いで五代から離れるとそのまま鏡の前に腰を下ろす。 「早く準備してください!間に合わなくなっても知りませんよ!!」 響子は照れ隠しで怒ったような素振りを見せながら化粧台の前で出発の準備を始める。 そんな響子の様子がまた五代には愛しくて仕方がない。 着替えをしながら、二人っきりの旅行となる新婚旅行が間違いなく最高の旅行になると確信し、思わず笑みがこぼれる五代であった。 完